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967kmを走りながら老後生活資金の準備について考えてみた(2)【計画との乖離編】

天気は思うに任せない前回は計画・準備に関するお話でしたが、今回は始まってからの実践編。


天気は思うに任せない

強風イメージ
天気は思うに任せない

レース開始は2023年4月22日(土)。

東北地方に寒波が入ったということで非常に寒い。当日の青森市の最高気温は11℃。

気温以上に閉口したのは強い西風。

強い向かい風、更には天気予報にもなかった小雨に降られ、震えながら幸先の悪いスタートとなりました。当日は強い向かい風が止むことはなく、道路上の標識で「西風12m」と表示されるのを見て、うんざりしたのを憶えています。

天気予報などである程度、先の天気はわかりますが、それでも風や雨、気温などからくる体感の変化等は実際に体験してみないとわからないものです。

資産形成の場合も同様です。ましてや「相場予報」などあるはずもなく、明日の株式市場や為替市場がどうなるかはわかりません。

「明日も株価が上がってくれるといいな」という期待は、「晴れて(暑くない程度に)暖かくなってくれるといいな」という願望と同じものです。

そんな願望を市場や天気は必ずしも叶えてくれるものではありません。

私たちは、そういった思うに任せない外部環境は、あるがままに受け入れて、それにどのように対処するのかを考えることが重要です。

「ずっと雨だったから」というように、「ずっと株価が下がったから」という言い訳はあるでしょうが、だからといって、それで老後生活資金が足りなくなったとしても誰かが助けてくれるわけではありませんから。

当日の青森市の天気予報は晴れだったでしょうか。

予想外の寒さと風に対し、参加者はそれぞれに上着を着るなどの防寒対策を行ったりしています。一方で、私のように天気が回復すると信じて、薄着のまま臨むものもいたりします。結果として何が正解なのかは、実際に走り出してからでないとわかりませんが、そこは自己責任でベストと思う対応をするわけです。

資産形成でも株式相場が崩れるなかで、株式投資の割合を減らして債券への投資を増やす人もいるでしょうし、これからの株価反転を狙って株式投資を積み増す人もいるはずです。

勿論、やったことが必ずしも正解となりません。しかし、口惜しいとは思うでしょうが、自分で選択したことならば失敗したことにも納得できるでしょうし、何より次の機会への経験・糧になります。

短期のパフォーマンスで有頂天にならない

スタートから約320km 海の向こうに鳥海山を臨む
スタートから約320km 海の向こうに鳥海山を臨む

誰しも成功すると有頂天になってしまいます。

スタートして暫くすると、少し薄日が差してきて、走っていると汗ばむくらいになってきました。

薄着の私が汗ばむくらいですから防寒対策をしていた他の参加者はいわずもがなです。

ウェアを替えたり、体制を再度整えるために立ち止まるために、気が付けば単独走になっていました。

23km地点の第1チェックポイントをトップ通過したものの、ちょっと急ぎ過ぎを懸念してスピードを落としました。それでもトップということで有頂天になっていたのだと思います。

30kmあたりでしょうか、後続の参加者が追いついてきました。

それほど疲労も感じていなかったことで「今、30kmくらいですから、もう50分の1くらい終わってしまったということですよね。」と軽い発言をする私に対し、彼は「えぇ、あと“たった1520km”が残っているだけですよ。」と冷笑しました。

それを聞いてはっとしました。私は直近の30kmしか見ておらず、長期の目標を蔑ろにしていたのだと。

資産形成でも同様です。

短期間で思った以上の利益が出るというのはよくあることです。

しかし、そのパフォーマンスは必ずしも継続するものではありません。特に老後生活資金の準備であれば、目標金額を達成してから初めて笑いましょう。

1,000万円の投資を2,000万円に殖やそうという道程のなかで、たかだか20万円くらい利益が出たからといって喜んでいても、あまり意味がありません。それは逆も同じで、20万円の損失が出たとしても、長い運用のなかではその損失を埋めるチャンスもあるはずで、時々の相場の上げ下げに一喜一憂する必要はないでしょう。

勿論、人間ですから、私のように、勝っているときに有頂天になってしまう気持ちもよくわかりますが・・・。

計画では、等身大の目標にするために道程を刻んで考えましたが、スタートしてからはゴールを視座に据えた「長い目」で見ることが必要です。この最終的なゴールを見据えて戦略を変更していく在り方を「ゴールベースアプローチ」と言いますが、これはまた次回お話しします。

自分の変化を知り、解決策・弥縫(びほう)策を考えてみる

スタートから約320km 海の向こうに鳥海山を臨む
スタートから約480kmの新潟県長岡市付近(野積橋)

さて、このレースの難しいところは、どのタイミングで、また、どこで、休憩を取るのかといったところでも戦略性を求められるところです。

私はスタートから約80kmの大館市のネットカフェで休憩することにしましたが、後続の参加者の多くが、大館で止まることなく、夜を徹して歩き続けたようです。

1日あたりどれだけ進めるか予測がつかない場合には、なかなか事前にホテルを予約できませんので、自ずと24時間いつでも利用できるようなネットカフェを利用するか、野宿(!)を選択することになります。

第1回大会はコロナ禍の最中だったため、当日でも宿泊先の予約が取れたそうですが、コロナ後のGWにも重なる今年は当日の宿泊予約がほぼ不可能という状況でした。

一方で、自身の力量をしっかり見定めて、保守的に1日あたりの走行距離を定めたうえで、事前にすべての宿泊先を予約しておくという堅実な方法もあります。

どちらが良い悪いではなく、どちらの方法もあるのでしょう。

保守的な距離で刻み、目標がタイムではなく、完走になるのなら後者の方が堅実かもしれません。ただし、日々の天候は変わりますので、歩きやすい日に多めに歩いて、雨の日は少なくするとか柔軟性に欠けるところが難かもしれません。

資産形成でも同様で、きっちりと1年単位で運用の評価と見直しをするというのも良いでしょうし、相場の変動等に目を配りながら折々に運用の評価や見直しを行うという方法もあるでしょう。

今回、誤算だったのは、ネットカフェではなかなか寝られないということでした。

経験がないわけではなく、昨年開催された「例幣使みちジャーニーラン(京都御所~日光東照宮 570km)」ではネットカフェを多用し、十分睡眠が取れていただけに、この1年で体調の変化があったのかもしれません。

2時間程度しか眠れないまま、夜中の1時や2時に再スタートする日が続きます。翌日のパフォーマンスもなかなか上がりません。眠くて、時折ふらふらしながら歩くからです。

少し違うかもしれませんが、資産形成の場合は自身を取り巻く環境の変化に似ているかもしれません。

これまでは定期的に自分の投資をしっかり確認してメンテすることができていたのに、子どもが生まれて、なかなか投資に目配りをする時間を取れなくなってしまったといった感じでしょうか。

子どもの夜泣きに目をこすりながら仕事に取り組む姿は、ネットカフェ翌日の歩みとよく似ています。

コースとなる国道や県道には必ずしも歩道があるわけではありません。歩道がなければ路側帯を歩きますが、路側帯もなければ本当に狭い路肩を進まなければなりません。そんなところをふらふらと歩いたりしては・・・。

なので、日中でも仮眠を取ることにしました。

道沿いに公園を見つけると、その片隅に座り込んで10分ほど目を閉じるのです。アラームで目が覚めると意外にスッキリしています。

勿論、睡眠不足が激しいときは、日中、これを何度も繰り返すことになりますが、それでも無理にふらふら歩くよりはパフォーマンスは改善したように思われます。

環境の変化に対して、抜本的に解消する方法だけでなく、弥縫策としての対応・気休めは資産形成でも役に立ちそうです。

遠回りのようでも、いろいろ試してみることで、解決策が見つかるかもしれません。

今回は実際に開始してからの計画と現実の乖離や変化について見てみました。

次回は、トラブル発生と目標・ゴールとの調整(ゴールベースアプローチ)について触れてみたいと思います。

なお、今回の記事は筆者個人の見解であり、当社の公式な見解を示すものではありません。

【筆者紹介】結城宗治
日本生命保険相互会社入社後、国内債券投資、財務企画を経験後、投資信託販売事業の立上げを担当。ニッセイアセットマネジメントでは投資信託企画の担当を経て、ファンドラップサービスGoalNaviを立ち上げ。DX推進担当。

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