967kmを走りながら老後生活資金の準備について考えてみた(1)【旅の計画編】
筆者は過去に、「東京マラソン」「北海道マラソン」「NAHAマラソン」「大阪マラソン」「別府大分毎日マラソン」など、多くのマラソンに参加してきました。
そのなかでも今回は、先日参加した「青森駅から下関駅間の1,550kmを走る(歩く)」という、気が遠くなるような「本州縦断フットレース」という超長距離のマラソン(?)についてご紹介しつつ、老後の生活資金準備についても考えてみたいと思います。
本州縦断フットレースとは?
本州縦断青森~下関1550kmフットレースとは、その名の通り、青森駅から下関駅までの1550kmを、主に国道7号線・8号線・9号線を経由して辿る超長距離レースのことです。
青森から下関まで一気通貫でいく「本州縦断ステージ」(1,550km)のほか、
青森駅~新潟駅間の「R7ステージ」(433km)、
新潟駅~西舞鶴駅間の「R8ステージ」(535km)、
西舞鶴駅~下関駅間の「R9ステージ」(582km)
といった小区分のレースも存在します。
逆に本州縦断の往復(青森~下関~青森 3100km)という信じがたいものもあります。
これらの距離をそれぞれ自分の足で、制限時間内に走破することが求められ、必要な荷物の携帯も宿の手配も自己責任です。
ちなみに制限時間は、本州縦断ステージが720時間(30日)、
R7ステージが216時間(9日)、
R8ステージが240時間(10日)、
R9ステージが264時間(11日)。
4月~10月の任意の日から始めるという自己申告制のものが、このノーマルの本州縦断フットレースなのですが、これに競技性を加えたSPECIAL版が2年に1度開催されます。
参加者が青森駅から下関駅に向けて一斉にスタートし、ノーマルより厳しい制限時間(564時間:23日12時間)で競うというものです。
2回目となる今年の大会参加者12名に紛れ込んだ私ですが、お恥ずかしながら、西舞鶴駅(967km)でリタイアしてしまいました。
周囲の期待に応えられず、本当に申し訳ない限りです。
とはいえ、この967kmの長丁場、時間で言うと317時間(13日5時間)の経験や、その準備段階で感じた、このレースと老後生活に向けた資金準備との共通点について、雑記としてご紹介します。
想像できないものも想像しないと戦えない
誰もがそうでしょうが、「1,550kmの距離を歩く」といっても、なかなかイメージが湧きません。そもそも、そんな長距離を誰も歩いた経験がないからです。
しかし、わからないからノープランで行くというのは危険行為だろうということはおわかりいただけると思います。
そこで、この1,550kmを想像できない距離として捉えるのではなく、もっと小さな想像できる単位に分割して考えることにしました。
青森駅から下関駅までは1,550kmですが、青森駅から新潟駅までなら433kmです。これなら少しイメージも湧きます(?)が、まだまだ自分の身近なスコープ内に落とし込めません。
そこでコースに存在するほぼ全ての交差点名を洗い出し、交差点ごとの距離を測りました。
すると各交差点間の距離は長くても数キロメートルに収まり、走りやすい(歩きやすい)身近な距離に落とし込むことができました。
何も1550kmを走るのではなく、長くても数キロメートルの交差点間を地道に潰していくのなら何もできないことではありません。あとは、その交差点の数を克服できるかという、どちらかといえば精神力の問題です。
老後生活資金の備えも同じです。
誰しもいつかは迎えるものですが、非常に先の話として、なかなか自分のこととして考えることはありませんし、詳しく想像するのも難しいのではないでしょうか。
しかし、想像しにくいからといって、1,550kmの話と同様に無計画ではいられません。
いざとなれば逃げることができる本州縦断フットレースと異なり、老後生活を迎えることは不可避なのですから、その分まじめに計画を立てなければなりません。
よく資産形成に付随して、ライフプランの話が出てきますが、これは老後生活に向けた長い道程で、どんなライフイベントが生ずるのかを確認することにほかなりません。
このライフイベントが交差点に相当しますから、どれだけ詳細にライフイベントを考えられるかが、資産形成の計画性を増し、老後資金準備の安心感を齎(もたら)すものかと思われます。
「将来のことはよくわからないから」と将来のイベントを考えないというのは、地図もなしに1,550㎞を走り出すのと似ています。日本は道路表示がしっかりしているので、いつかは辿り着くでしょうが、どれだけ遠回りすることになるでしょう?
どれだけ用意するのか考えてみる
道程を確認したら、次は何を持っていくか、どれだけの荷物を用意するかを考えます。
制限時間は564時間ですから、これに見合った装備が必要です。
とはいえ、荷物はすべて自分で背負うことになりますので、峠越えも多数あるコースを考えれば、いかに荷物を減らすかに知恵を絞らなければなりません。
軽くするために防寒具を減らせば、気温が低くなれば凍えることになりますし、雨に対しては傘が良いのかレインコートにするのかといった選択もあるでしょう。荷物が多ければ、いろいろなことに対応できますが、常に重荷を背負うこととなり肩は凝りますし、走った際の脚へのダメージにも繋がります。
そのため適切に現実に対応でき、かつ軽量となる程よい装備を作り上げることが重要になります。持参しなかったことを悔やむものや、逆に全く使わずに失敗したと臍を噛むものも出てくるはずです。
私の場合は防寒に力を入れたので寒さは殆ど感じることはありませんでしたが、そもそもそれほど寒い日自体ありませんでした。使い捨てカイロは重いだけで全く無用の長物でした。一方で、身体のケア周りの装備を持参していなかったため、身体の補修や怪我の手当てで後れを取った感は否めません。結局5.5kgの重量となり、これが肩にずっしりと圧し掛かることになりました。
老後生活資金の準備に当てはめると、装備の量は資産形成に投入する資金の量に相当しそうです。
十分な資金を資産形成に回せば、その分だけ老後生活資金の備えとしては安泰になりますが、過度に積立額を増やすようでは現在の生活が楽しくありません。
逆に、資産形成に回す資金が少ない人は、荷物が軽い分、現在は楽かもしれませんが、急な病気など(本州縦断の例で言えば、急に寒くなったときなど)何かあったときに対応できないかもしれません。
どれだけの資金を投入するのが良いのかは人によって異なりますが、これはどんな装備をもっていくのが良いか人によって異なるのと同じです。
老後生活資金を作るのが最重要なのではなく、現在の生活と老後の生活のバランスをとりながら、適度な資金を投資するということが必要なのでしょう。
何を使って挑むのかを考える
「1,550kmもの超長距離、どんなシューズで走るんですか?一足で大丈夫なんですか?」
そんな問いがよくありますが、今どきのシューズなら、多分1,550kmでも一足で十分問題ありません。
ただし、どれでも良いかというと向き・不向きがあるでしょう。
毎日十数時間、ときには徹夜で歩き続けるため、自ずと足への負担の少ないクッション性の高いものが選ばれそうです。
また、これだけの超長距離を走る(歩く)となると足は必然的に腫れてきますから、シューズも横や甲の部分が少しずつきつくなってきます。
靴ひもを緩めたりするのは勿論ですが、なかには圧を逃がすため、シューズの横を切ったという話も聞きます。
クッション性や重さ、あるいはシューズの幅や甲の高さなど、人によって良し悪しはわかれますが、シューズはパフォーマンスに一番大きな影響を与える選択と言えるでしょう。
老後生活に向けた資産形成の目線で見れば、シューズとは資産形成手段と言えそうです。
どれだけの期間での資産形成なのかがまず一番大きな選択ポイントです。
ブルベア型投信など短期的な高リターンを狙ったような商品などは、シューズで言えば、非常にソールの薄い、軽いシューズだったりするのかもしれません。
出足は良いパフォーマンスを示すかもしれませんが、長期に続けると脚を傷めることでパフォーマンスが大きく損なわれてしまうこともあるでしょう。
逆に安全性を重視してリスクの低い商品に投資するのでは、パフォーマンスもあがりません。非常に厚底の重いシューズを履くような感じでしょうか?怪我はしにくいでしょうが、目的地に着くのはなかなか時間がかかりそうです。
クッション性が高く、それでいて軽い、自分にあった運用手法を見つけることが重要となるわけですが、資産形成の場合は本州縦断の例と異なり、自由に履き替え(乗り換え)ができますから、環境の変化に合わせて運用手法を替えていくことも選択肢のひとつです。
とはいえ、最初から最後まで変わらない良いシューズに早く巡り合いたいものです。
今回は本州縦断フットレースという超長距離のレースと超長期の運用となる老後生活資金準備の相似点を、その計画面から見てみました。
次回は、レース(資産形成)が始まってからの状況変化とその対応について触れてみたいと思います。
なお、今回の記事は筆者個人の見解であり、当社の公式な見解を示すものではありません。
【筆者紹介】結城宗治
日本生命保険相互会社入社後、国内債券投資、財務企画を経験後、投資信託販売事業の立上げを担当。ニッセイアセットマネジメントでは投資信託企画の担当を経て、ファンドラップサービスGoalNaviを立ち上げ。DX推進担当。
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