NISA制度の本家「英国」から学ぶ、NISA・新NISA活用投資術!~アセマネ会社によるNISA制度改正のポイント解説(8)~
そもそもNISAってなに?
「英国ISA」をお手本に日本で2014年から始まった「少額投資非課税制度」です。2024年1月より、非課税枠や非課税対象期間が大幅拡充され、岸田首相の掲げる「資産所得倍増プラン」の目玉施策のひとつとなっています。
本家「英国ISA」の制度とは
英国では1999年に、国民の貯蓄率向上を目的に導入されました。当初は10年間の時限措置でしたが、2008年に制度が恒久化され、利用者も拡大しました。ライフステージに合わせた資産形成支援制度が幅広く用意されているのが特徴です。
普及状況は
ISA口座は約2,700万口座を超えており(2021年推定)、英国の成人人口の約半数が保有(!)しているようです。
日本の成人人口対比での普及率が約11%(1,144万口座(※1)÷1億463万人(※2))ですから、非常に普及していることがわかります。
※1 2022年9月末時点https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/files/nisajoukyou/nisaall.pdf
※2 2023年3月概算
https://www.stat.go.jp/data/jinsui/pdf/202303.pdf
なぜそんなに普及したか?
英国ISAは制度開始からそろそろ四半世紀が経とうとしています。日本と同様に、これまで年間拠出上限の引き上げや制度の恒久化、プランの拡充などが進められてきましたが、これらが多くの利用者を呼び込んだものと思われます。
ISA開始初期の頃から資産形成を始めた利用者の中にはISAミリオネア(ISAでの資産残高が100万ポンド(1ポンド160円で計算で1.6億円)を超える人(※3))と呼ばれる人たちも現れています。
※3
また、ISAの普及には、アドバイザーの存在も大きく寄与してきたと考えられます。
ISAでは預金型、株式型のような商品の区分があるほか、持ち家購入や退職後の資金準備に用途を限定したプランなど様々な選択肢があり、肌理細かく利用者の特定のニーズに応える工夫がなされています。
投資対象の組合せを決めることを「アセットアロケーション」と言いますが、効率的な資産形成を行うための最初の一歩として、とても大事なポイントです。しかし、利用可能なプランや組合せが多数あると、どれを選べば良いのか、あるいはどのように組み合わせていいのか、判断がつかない人も少なくありません。
そのような投資の第一歩から丁寧に説明してくれる、いわば「家庭教師」のような存在のアドバイザーが英国では多く活躍しており、ISAの普及に貢献してきたと評価されているようです。
一方、有料のアドバイザーに頼らず、自分で資産形成に取り組む「DIY投資家」も、20-30代には多くみられます。英国では、「ファンド・プラットフォーム」が、このようなDIY投資家に対して資産形成に効率的に取り組むことができるような環境を提供しています。
ファンド・プラットフォームは特定の金融グループに偏らず、複数の運用会社の金融商品で投資家の利用目的やリスク水準に沿ったポートフォリオの組み方を各種提示してくれる存在で、DIY投資家にとって欠かすことのできないインフラとなっています。
残念ながら日本では、富裕層向けのアドバイザー(IFA)を除けば、英国のような頼れるアドバイザーが普及しているとは言えないのが現状です。NISA制度拡充により日本でも英国と同様にポートフォリオを決めるためのアドバイスの必要性は高まっていると言え、昨年末の金融審議会(顧客本位タスクフォース)でもアドバイザー制度の整備について言及しているところです。
また、人によるアドバイスだけでなく、個人の投資目的やリスク水準に合った資産形成の道筋を示してくれるものとして、ファンドラップやロボアドバイザー(ロボアド)の活用も考えてみても良いでしょう。
2024年1月からの新NISAは、年間の拠出額が英国ISAを超える(日本:成長投資枠240万円+つみたて投資枠120万円=360万円>英国:2万ポンド[160円換算で320万円])など、私たちの資産形成を支える仕組みが飛躍的に整うことになります。賢く利用することで将来の見え方も変わってくることでしょう。
本家「英国ISA」から学ぶ、新NISA活用術とは?
以上の英国ISA制度の普及のポイントを踏まえ、日本でのNISA制度(来年からの新NISAも)活用のポイントをまとめました。
① 英国ではNISA利用が当たり前。資産形成を検討するなら、まずNISA制度活用を視野に入れて検討すべし。
英国での普及率を見てもわかるように、税制で有利なNISA制度を活用しない手はない。
② 資産形成では目的やリスク水準に応じたポートフォリオをうまく作ることが大事。複雑な選択は外部のアドバイスを受けることも選択肢。
非課税で拠出できる金額が増える分だけ、その後の運用の重要性も高まります。
よく日本は「金融リテラシーが低い」との批判を受けることもありますが、英国でも資産形成にあたっては、自分ひとりで判断するのではなく、どんなポートフォリオにするのが良いか等を外部のアドバイザーと相談することが太宗です。(アドバイスにもとづき、投資家自身の運用スタイルにあった「おまかせ運用」をされる方も少なくないようです。)
恒久化という制度改正で、非常に長期の運用期間を享受できるようになった新NISA制度で、意図せぬリスクを抱え込まぬよう外部からのアドバイスを求めることも重要になってきているのかもしれません。
NISAに拠出するのなら、独りで決めずに、証券会社や銀行の窓口で相談することも考えてみてはいかがでしょう。
英国では人によるアドバイスが一般的ですが、日本では、相談に行く時間がとれないとか、人に対して「お金の相談」をすることに抵抗がある方も、まだまだ多いように思われます。そんな方は、ロボットによるアドバイス(ロボアドバイザー)も選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。
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③「DIY投資家」を目指すなら、しっかりと情報収集を
英国の若年層のように、アドバイザーに頼らず自分で一から資産運用方法を組み立てる「DIY投資家」を目指すなら、まずは情報収集をしっかりと行うことが大切です。手数料や運用パフォーマンスなど、証券会社や資産運用会社等のウェブサイトには多くの情報がありますので、まずは覗いてみるのもいいかもしれません。
このnoteでもどんどん情報を発信していきますので、是非ご活用ください。
【知っていると差がつくかも!?】SNSやウェブサイトを活用した、資産運用初心者向け情報収集のコツ
まとめ
いよいよ来年1月から「新NISA制度」がスタートします。ぜひ今回の記事を、制度の活用や商品選びの参考にしてください。
今回の記事は筆者個人の見解であり、当社の公式な見解を示すものではありません。また、投資等にあたっては各種の情報にあたり、ご自身の判断にて実行されますようお願いします。
【筆者紹介】相川雅宏
日系投資信託会社入社後、国内外でパッシブファンドの運用に従事。ニッセイアセットマネジメントでは商品企画開発業務を担当。
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https://note.nam.co.jp/m/mc4772f7bf330
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