1,000万円をどう運用する? 運用方法を紹介
コツコツと貯めた預貯金が1000万円を超えてくると、ここからは投資で資産を増やしていきたいところです。もちろん、老後に備えて、このまま安全確実な預貯金で貯蓄を積み重ねていくのもひとつの考え方です。しかし、世界的にも物価が上昇している昨今では、預貯金だけでは実質的に資産が目減りしてしまう可能性があります。そこで、今回は1000万円を元手とした資産運用と代表的な投資商品についてご紹介します。
1000万円の貯蓄がある人が、資産運用をするべき理由とは?
数年前には、「老後資金2000万円問題」が話題となりました。これは、老後の30年間で約2000万円の資金が不足するというもの。つまり、年金だけでは足りず、自身が保有する金融資産を取り崩して補填する必要があるということです。仮にこの試算の通りであれば、現在1000万円の貯蓄がある人も、あと1000万円を貯める必要があります。
若い世代にとっては1000万円を貯めるのは大変なことでしょう。しかし、50歳代にもなると、金融資産の保有額が1000万円を超えてくる人も増えてきます。金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査2022年(二人以上世帯)」によると、金融資産が1000万円を超えてくるのは、20歳代で5.4%、30歳代で21.3%、40歳代で28.9%、50歳代で43.4%との調査報告があります。少なくとも40歳代ではある程度の元手を確保し、老後に向けての資産運用を考え始めたほうがいいのではないでしょうか。
インフレや円安でお金の価値が目減りしていく
ここまで順調に1000万円を貯めた人であれば、今後も元本割れリスクのない預貯金などでコツコツと貯めていくという考え方もあります。しかし、長引く低金利に加え、昨今ではインフレや円安などで日本円の価値は目減りしていく傾向にあります。特に2023年は、モノやサービスの価格の上昇が顕著でした。
たとえば、これまで1,000円で買えた商品が、1,200円に値上がりしていたとすれば、それは日本円の価値が目減りしたということにほかなりません。物価の上昇に比例して、給料などの収入が上昇していけば問題はありませんが、なかなかそういうわけにもいきません。
また、外国為替市場では円安が進行しており、輸入品などの価格は円安によって上昇しています。これではとても物価の上昇にはついていけません。このような状況では、預貯金だけではお金の価値の目減りを防ぐことが難しいとわかると思います。
代表的な投資商品の種類
そこで、これまで貯めた1000万円を元手に、今後はある程度のリスクを取ってリターンが期待できる金融商品に投資するとしたら、どんな商品があるでしょうか。一口に金融商品といってもさまざまな種類があります。ここからは比較的ポピュラーな金融商品についてご紹介していきます。
株式投資
株式投資は、上場している企業の株式に投資して収益を狙う金融商品です。株式投資の利益には、キャピタルゲイン(値上がり益)と、配当や株主優待といったインカムゲインの2種類があります。
株式投資は大きなリターンが期待できる一方で、リスクもあります。購入した株価よりも値下がりしたところで売却した場合には損失が出ますし、企業が経営破綻した場合には、投資した元本がゼロになってしまうこともあります。投資初心者であれば、足元の業績が安定していて、今後も成長が期待できる会社を選ぶようにしたいものです。
債券投資
債券は、国や地方自治体、企業などが資金調達のために発行する借用証書のようなものです。債券を購入した投資家は定期的に利子を受け取り、償還日(満期日)には元本が返済されます。また、償還日前に途中で売却することも可能です。株式投資に比べてリスクが低く、定期預金と比較して利息も高いというメリットがあります。
ただし、「信用リスク」「価格変動リスク」「為替変動リスク(外国債券の場合)」「カントリーリスク(外国債券の場合)」といったリスクが存在しますので、実際に投資する場合には商品の特性を十分に理解する必要があります。
投資信託
投資信託は、投資家から集めたお金を運用のプロであるファンドマネージャーが国内外の株式や債券、不動産などの金融商品で運用し、その運用の成果を投資家に分配する金融商品です。少額で投資できることもあり、投資初心者にも人気の金融商品です。ただし、手数料や信託報酬といったコストも必要なうえ、運用成績次第では元本割れの可能性もあります。
1000万円を運用した場合のシミュレーション
ここまで紹介した金融商品は比較的ポピュラーなものですが、これ以外にもさまざまな金融商品が存在します。金融商品や投資先の相場環境によってもリスクリターンの度合いは異なりますが、仮に1000万円を年間3%の運用利回りで投資した場合、元本は5年後に1159万2700円、10年後に1343万9200円、20年後には1806万1100円と膨らんでいきます。下の図は、年間の平均利回りを「1%、3%、5%」としてシミュレーションしたものです。利息の低い預貯金では、とても達成できない金額ということがわかるはずです。
ちなみに、金融の世界には「72の法則」と呼ばれるものがあります。これは資産を2倍にするために必要な年数がわかるという計算式。「72÷利回り(%)=投資期間(年数)」で求められます。たとえば、年間の利回りが6%であれば、「72÷6=12」となり、およそ12年で資産が2倍になるという計算です。
1000万円を運用するときに気を付けたいポイント
ここで気を付けたいのは、1000万円を1つの金融商品に集中投資しないことです。「卵はひとつのカゴに盛るな」という投資の格言があるように、すべて資金を1つの金融商品に集中投資してしまうと、その金融商品の投資環境が悪い場合には、資産が大きく目減りしてしまうことになるからです。1000万円もの元手があるのであれば、複数の金融商品に分散して投資したほうがリスクを抑えられる可能性があります。また、同じ金融商品の中でも時間軸を分けて投資することもリスク分散のひとつの考え方となります。
リスクについて詳しく知りたい方は、ぜひこちらもご覧ください。
「リスクって怖いもの?投資のリスクを理解してインフレに対峙しよう」
税制
最後に税制について簡単に触れておきましょう。原則、投資で得た利益には税金がかかります。税率は投資先の金融商品によっても異なります。なお、NISA口座(少額投資非課税制度)での運用については、一定の制限はあるものの運用益が非課税となります。そのため、株式や投資信託での運用を考えている場合、1000万円の一部をNISA口座に振り分けるのは賢い選択といえそうです。
NISA制度について詳しく知りたい方は、ぜひこちらもご覧ください。
「アセマネ会社によるNISA制度改正のポイント解説」
「Smart NISA Labo」
まとめ
ここまで代表的な金融商品を駆け足で解説してきましたが、実際に投資する場合には、金融商品の特性やリスクリターンを十分に理解して投資することが重要です。無理をせずに、自分の投資スタイルに合った金融商品を選ぶようにしたいものです。