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「非課税枠が増えても、投資に回すお金は増えないからなぁ」って本当?~アセマネ会社によるNISA制度改正のポイント解説(11)

NISA制度の改正により恒久化され、非課税枠が広がったことで、私たちの資産形成には大きなプラスになると歓迎の声が多く聞かれます。

では、あなたにとって、歓迎すべき変更は何だったのでしょうか?
非課税枠の拡大?
だとしたら、あなたは来年から投資額を増やすのですね?


新NISAが始まったら、毎年の投資額を増やしますか?


これまでご案内した通り、新NISAは従来の制度に比べて毎年の非課税枠が大きく拡大します。
つみたて投資枠(つみたてNISA)は40万円から120万円へと3倍になりますし、成長投資枠(一般NISA)だと120万円から240万円へと2倍に拡大します。
さらに、つみたて投資枠と成長投資枠は併用できますから、積立だと1年で360万円まで非課税投資が可能です。一括投資は成長投資枠の240万円が上限ですが、合わせて120万円の積立も併用できます。
このように大きく非課税枠が拡大するわけですが・・・。

「新NISAが始まったとき、積立額を増やしますか?投資額を増やす予定がありますか?」

おそらく、これまで毎年の非課税枠いっぱい(つみたてNISA:年間40万円、一般NISA:年間120万円)まで投資されていた方の多くは「Yes」と答えるでしょう。
では、そもそも現行NISAの非課税枠を使い切っていない方はどうなんでしょうか?

「これまでもギリギリ投資をしてきたから、非課税枠が広がったからといって、積み増しは難しいよ。」
という答えが返ってきそうです。
無い袖は振れないということですね。
非課税メリットが大きくなったとはいえ、現在の生活を蔑ろにしてまで無理やり資金を捻出することは難しいでしょうから、致し方ないかもしれません。

しかし、ちょっと待ってください。
毎月の収入から資金を捻出することはできないかもしれませんが、保有している資産をうまく活用することはできませんか?

預金はたくさんあるけれど・・・。


毎月の収入から資金を捻出するのは難しいけれど、実は預金口座にたくさんの資金が眠っているということはありませんか?

例えば、相続によって受け継いだ資金だとか、リタイアの際に得た退職金など、使途が決まらないままに、「まずは安全な預金口座に置いておこう」と、そのままになっている資金などです。

足元、電気料金の値上げなど生活を取り巻く物価の上昇を嘆く声を聞かない日はないくらい、インフレへの警戒感が高まっています。

現在のように普通預金の金利が低いうえに、インフレが進んでいる中では、預金しているお金の価値は下がってしまい、目減りしているといえます。

そのような状況で資産の中の預金の比率を高く維持しておくことはインフレの対応力という面であまりお勧めできるとは言えません。

預金の比率が高い場合、あるいは預金の使途が定まっていない(即ち、余裕資金になっている)場合には、預金を取り崩して、新NISAの非課税枠を有効するという方法も考えてみてはいかがでしょうか。

金融資産の再配分によってインフレ対応力を高めるとともに、非課税メリットも享受できるからです。

NISA口座以外に(証券)口座を持っていない?

毎月の余裕もないし、預金も殆どない。

では、証券会社で口座を持っていたり、特定口座などNISA口座以外があったりしませんか?

その証券口座で、株式や投資信託を保有していたりしませんか?

せっかくならNISA口座でまとめて非課税にすることを検討してみてはどうでしょう。(この部分については後述の「特定口座から新NISA口座に「移す」ことができる?」を読んでください。)

保有する株式・投資信託の値上がり益や配当金・分配金が非課税になるNISA口座を使わない手はありません。

勿論売買の際に手数料がかかる商品もあったり、NISA口座になると特定口座のように他の資産との損益通算ができなくなるなどのデメリットもありますので、すべてNISA口座に纏めることが正解ではありませんが、一考の価値はあるものと思われます。

NISA口座の非課税枠(生涯非課税枠1,800万円)を大きく上回るような資産家の方は、NISA口座にすべての資産を纏めることはできません。どうしても課税口座での運用が必要になりますから、課税口座で保有する資産とNISA口座で保有する資産で、何をどれだけ、NISA口座に纏めるのが良いかメリットとデメリットを踏まえて考えましょう。

まずはNISA口座以外を棚卸し

しかし、課税口座の残高が1,800万円未満だからといって、すべての資産が移せるわけではありません。

「新NISAでは使えない商品があるらしいけど、影響はどうなる? ~ アセマネ会社によるNISA制度改正のポイント解説(4)」でも解説の通り、どんな資産でも新NISA口座で投資できるわけではありません。

「つみたて投資枠」を利用するなら、金融庁が定めた「つみたてNISAの対象商品」であることが必要です。

参考:
新NISAでは使えない商品があるらしいけど、影響はどうなる? ~ アセマネ会社によるNISA制度改正のポイント解説(4)

つみたてNISAの対象商品【NISA特設ウェブサイト - 金融庁】

また、「つみたて投資枠」よりも自由度の高い「成長投資枠」でも公社債や公社債投資信託には投資できませんし、上場株式についても整理・監理銘柄が対象外となっています。

投資信託商品については株式投資信託が対象となりますが、毎月決算型の商品や信託期間が短いもの、ヘッジ目的以外でデリバティブを利用するものには投資することができません。

前号でご紹介したように、投資信託協会が成長投資枠で利用できる投資信託商品を公表していますので、自分の保有している投資信託が新NISA(成長投資枠)で投資できるのかどうかを確認しておくと良いでしょう。

【投資信託協会】一般投資家向け対象商品リスト

特定口座から新NISA口座に「移す」ことができる?

「移す」というと語弊がありそうです。

株式や投資信託をそのまま特定口座からNISA口座に移管することはできません。

特定口座からNISA口座に株式や投資信託を移すには、特定口座で保有商品を売却し、同じ商品をNISA口座で買い戻す方法で疑似的に再現できます。

簡単に言うと、特定の商品を一旦売って、買い直すということです。

「えっ、売却したら、現在の含み益に課税されてしまうじゃないか。」

その通りです。

しかし、非課税口座でなければ、いつかは利益に課税されるものです。
たとえ、ここで課税されたとしても、この先の値上がり益に課税されない方が税金の面ではお得になる可能性もありそうです。

では、NISA口座に纏めるとした場合、どの商品を優先的に移していくのが良いでしょうか。

税金の面から筆者が考えたものが以下の通りになります。

  1. 値上がり益が狙いやすい商品(成長性の高い商品)

  2. 現在、含み損になっていて、特定口座で売却しても課税されないもの

NISAの非課税メリットから考えていくのですから、まずは相対的に大きな利益を期待できる商品を優先的にNISA口座に集めることになりそうです。

勿論、必ずしも大きな利益が約束されているわけではありませんが、債券などの低リスク商品に比して高い収益率の期待できる株式商品などが良さそうです。

前述したように、売却するときに課税されることに神経質になってしまう方も少なくありません。しかし、2.のような商品であれば、特定口座で売却するときに課税されませんから、売却することも少しは気楽かもしれませんね。

ただし、何も考えずに同じ商品を買いなおすのも勿体ないかもしれません。

せっかく(?)売却するのですから、この機会に自分の金融資産をすべて棚卸ししたうえで、どの商品が必要で、どの商品が不要かを考えてみましょう。

前述の2.の商品であれば、含み損になっているのに理由はありませんか?
当初購入したときに比べて環境が変わったりしていないでしょうか?

今一度、NISA口座で新たに買うべき商品は何かを、投資可能な対象商品のなかから考えてみましょう。

新NISAの開始にあたっては、単に非課税枠が増えて良かったことを喜ぶだけでなく、金融資産構成の見直し、口座(預金口座、NISA口座、特定口座等)構成の見直しを考える機会として、うまく活用してみてはいかがですか?

なお、今回の記事は筆者個人の見解であり、当社の公式な見解を示すものではありません。

【筆者紹介】
結城宗治:日本生命保険相互会社入社後、国内債券投資、財務企画を経験後、投資信託販売事業の立上げを担当。ニッセイアセットマネジメントでは投資信託企画の担当を経て、ファンドラップサービスGoalNaviを立ち上げ。DX推進担当。

・当資料で、筆者の紹介のある記事においては、掲載されている感想や評価はあくまでも筆者自身のものであり、ニッセイアセットマネジメントのものではありませんが、ニッセイアセットマネジメントと筆者との間でこれらの表示に係る情報等のやり取りを直接的又は間接的に行っているため、実質的にはニッセイアセットマネジメントの広告(「不当景品類及び不当表示防止法」におけるニッセイアセットマネジメントの表示)等に該当する場合がございますので、ご留意願います。

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