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物価の優等生、卵の価格の推移は?なぜ高騰したのか?

卵は、昔から「物価の優等生」といわれています。卵がほかの食品と比べて価格が上がらないのは、なぜなのでしょうか。本稿では、これまでの卵価格の推移を振り返りながら2023年に起きた価格高騰の背景を探ります。

卵が物価の優等生といわれる理由とは?

卵が「物価の優等生」といわれるのは、価格が長期的に安定しているからです。しかしそれには、以下のような主な理由があります。

<図 卵が物価の優等生といわれる理由>

また小売り現場で卵が客寄せ商品になっているという事情もあります。例えばスーパーでは客寄せ商品として「卵を含む会計が1,000円以上ならば卵をセール価格で購入できる」といった販売方法も見かけます。小売業界で実施する、このような施策も結果的に卵の小売価格を下げる要因の一つといえるでしょう。

卵価格の推移は驚くほど安定している

卵の価格がどれほど安定しているか、データから価格推移を確認しておきましょう。ここでは、35年間の長期推移と2019~2023年の5年間の4大都市圏の価格推移を紹介します。

おおむね150〜250円で推移を続ける卵|卵価格の年次推移

一般社団法人日本鶏卵協会の調べによる、1989~2023年までの年平均価格(全農、東京Mサイズ1キログラムあたり)は以下のグラフのように推移しています。

出典:一般社団法人日本鶏卵協会「鶏卵価格の年次別月別推移(全農:東京M、円/㎏)」より編集部作成

1989~2022年まではほぼ150~250円のボックス圏を推移しており、高騰した2023年を除けば卵の価格は安定していたといえます。2024年8月の価格は1キログラムあたり217円ですが、これは1991年8月(212円)と同じ水準です。つまり33年前と今の価格は、ほとんど変わっていないことになります。

“卵物価”が最も安いのは福岡|東京・大阪・名古屋・福岡の卵価格の推移


大都市である東京・大阪・名古屋・福岡の卵価格(全農、Mサイズ1キログラムあたり)は、以下のように推移しています。統計期間は2019~2023年の5年間です。

・東京

出典:JA全農たまご「相場情報 月ごとで見る」より編集部作成

東京の2019~2023年の5年間の価格推移は、年平均価格で173円(2019年)→171円(2020年)→217円(2021年)→215円(2022年)→306円(2023年)で、5年平均価格は216.4円です。

・大阪

出典:JA全農たまご「相場情報 月ごとで見る」より編集部作成

大阪の5年間の価格推移は、年平均価格で170円(2019年)→172円(2020年)→217円(2021年)→216円(2022年)→306円(2023年)で、5年平均価格は東京とほぼ同じ216.2円です。

・名古屋

出典:JA全農たまご「相場情報 月ごとで見る」より編集部作成

名古屋の5年間の価格推移は、年平均価格で176円(2019年)→173円(2020年)→215円(2021年)→214円(2022年)→310円(2023年)で、5年平均価格は217.6円です。

・福岡

出典:JA全農たまご「相場情報 月ごとで見る」より編集部作成

福岡の5年間の価格推移は、年平均価格で167円(2019年)→166円(2020年)→208円(2021年)→216円(2022年)→309円(2023年)で、5年平均価格は213.2円となっています。ほかの3都市と比べると安い水準です。

・4都市の5年平均価格の比較

出典:JA全農たまご「相場情報 月ごとで見る」より編集部作成

4都市の5年間の平均価格を比べてみると、上表のように名古屋が最も高く、福岡が最も安い結果となっています。

2023年には300円超も、卵が高騰した背景とは?

物価の優等生の卵価格も2023年には300円を超える水準まで高騰しました。この背景には、2つの理由があります。

●鳥インフルエンザの影響

1つ目の理由は、鳥インフルエンザの影響によって出荷数が減ったことです。NHKの報道によると2023年に卵を採取するための鶏が鳥インフルエンザになり、1,700万羽超処分されたといわれています。処分された数としては過去最多ですが、2023年4月8日以降は鳥インフルエンザの発生は確認されていません(2024年9月9日時点)。

マヨネーズの製造に卵を大量に消費する大手食品メーカーは、世界有数の鶏生産国であるブラジルから輸入を増やす対応を余儀なくされました。

●トウモロコシの価格高騰の影響

2つ目の理由は、鶏の飼料となるトウモロコシの価格が高騰したことです。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の影響による世界的な飼料不足が原因で輸入物価の高騰がコストプッシュ型のインフレを招き、結果的に卵の卸売価格が上昇しました。

ただし2024年に入ってからの卵価格は落ち着きを見せ、以下のように推移しています(全農、東京、Mサイズ1キログラムあたり)。卵が物価の優等生ということが改めて確認された形です。

【2024年1~8月までの卵の価格推移】

日本で最も卵にお金をかけるのは高知市民!?|卵の支出額ランキング

次に総務省統計局が公表している「家計調査(二人以上の世帯)品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市のランキング」(2021年~2023年平均)の卵支出額の順位を見てみましょう。

順位 都市名 卵支出額
1 高知市 1万3,127円
2 鳥取市 1万3,121円
3 奈良市 1万2,943円
4 神戸市 1万2,626円
5 岐阜市 1万2,569円
6 福島市 1万2,537円
7 和歌山市 1万2,461円
8 大津市 1万2,436円
9 堺市 1万2,315円
10 京都市 1万2,201円
11 長崎市 1万2,149円
12 広島市 1万2,132円
13 熊本市 1万2,101円
14 大阪市 1万2,013円
15 北九州市 1万1,945円
16 新潟市 1万1,877円
17 大分市 1万1,836円
18 相模原市 1万1,747円
19 千葉市 1万1,619円
20 津市 1万1,509円
21 山口市 1万1,470円
22 松江市 1万1,366円
23 那覇市 1万1,351円
24 福井市 1万1,283円
25 福岡市 1万1,223円
26 仙台市 1万1,191円
27 鹿児島県 1万1,181円
28 松山市 1万1,166円
29 静岡市 1万1,135円
30 横浜市 1万1,118円
31 さいたま市 1万1,100円
32 佐賀市 1万1,024円
33 浜松市 1万1,016円
34 名古屋市 1万995円
35 川崎市 1万985円
36 長野市 1万927円
37 山形市 1万916円
38 東京都区部 1万908円
39 金沢市 1万707円
40 秋田市 1万585円
41 岡山市 1万578円
42 甲府市 1万476円
43 水戸市 1万342円
44 高松市 1万262円
45 徳島市 1万228円
46 札幌市 1万227円
47 宮崎市 1万167円
48 宇都宮市 9,886円
49 盛岡市 9,729円
50 富山市 9,636円
51 前橋市 9,315円
52 青森市 8,696円
全国 1万1,205円

出典:総務省統計局「家計調査(二人以上の世帯) 品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市(※)ランキング(2021年(令和3年)~2023年(令和5年)平均)」より編集部作成

ランキングを見ると大都市よりも地方都市のほうが卵への支出額が多い傾向です。数字は、二人以上世帯1世帯あたりの年間支出額のため、月換算で725~1,094円支出していることになります。月1,000円程度であれば、“やはり卵は安い”という印象を持つでしょう。

インフレに備えるために資産運用を検討してみては

様々な要因から長期的に安定した価格を維持してきた卵も、直近では価格が高騰する場面がみられました。このような価格高騰・インフレに備えるために資産運用は大切です。この機会に一度検討してみてはいかがでしょうか。

※本記事は2024年9月6日現在の情報を基に構成しています。卵価格は変動しますので、参考程度にご覧ください。



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