世界最高の電気自動車が東京お台場を疾走!電気自動車の普及加速が必至?
2024年3月30日、東京・お台場の東京ビッグサイト(東京国際展示場)周辺で、日本初となる「フォーミュラE」のレースが開催されることになりました。フォーミュラE は電動のモーターを動力源とする、いわゆるEV(電気自動車)の最高峰のレース。最高速度・時速280kmの最新マシンがお台場周辺を駆け巡る姿を想像すると、モータースポーツファンでなくてもワクワクするのではないでしょうか。今回は、カーレースの花形であるF1(フォーミュラワン)とフォーミュラEの違いなどを紹介するとともに、今後の電気自動車の普及や、日本の株式市場における電気自動車の将来性を考えていきましょう。
日本初の公道レース「フォーミュラE」が開催へ
フォーミュラEは、F1と同じFIA(国際自動車連盟)主催のカーレース。最新のフォーミュラE のマシンで公道を走ることによって、EVに関する最新のテクノロジーを世界に紹介する一方、自動車業界に対して「EV開発のイノベーション」を促すことを1つの目的としています。
フォーミュラEは2012年に開催が発表され、2014年に中国の北京で初レースが開催。それ以降、欧米や中東、アジアなど、世界各地の「特設市街地サーキット」で開かれており、パリやローマ、ニューヨークといった大都市も舞台になりました。日本人では過去、元F1ドライバーの実績を持つ佐藤琢磨さんや山本左近さん、小林可夢偉さんの3人がフォーミュラEに参戦しています。
日本では、1976年に初めて富士の裾野に広がる富士スピードウェイでF1レースが開催され、1987年以降は「日本グランプリ」として定着しています。フォーミュラEに関しては、これまで日本でレースは行われていませんでしたが、2022年に東京都がフォーミュラE・オペレーションズとレースの開催協定を締結。2024年3月に日本初の公道レース開催が決定しました。東京が開催地として決定する以前は横浜や大阪なども候補に上がっていたようです 。
F1とフォーミュラEの違い
ここで、F1とフォーミュラEの違いについて、もう少しご紹介しましょう。まず、F1の最大の魅力であるスピードについて。F1レースが始まった1950年代、優勝したクルマの平均速度は時速150km台 だったようです。時代を追うごとにスピードは上昇。2003年にフェラーリのF1マシンに搭乗し、年間チャンピオンにも輝いたミハエル・シューマッハがイタリアグランプリで記録 した平均速度は、時速247.585km。また、最高速度は2005年、同じくイタリアグランプリで記録された時速372.6kmとのことです。平均時速は、50年間で約100km伸びたことになります。
一方、フォーミュラEはレース場ではなく公道を走行することもあり、最高速度は時速280km程度と控え目。ただ、2023年に登場した第3世代(Generation3)のマシンでは、最高速度が時速322kmまで上がりました。2024年3月30日に開催されるレースでも、この最新型のフォーミュラEカーがお台場の街を疾走することになります。
さらに、F1とフォーミュラEの大きな違いの1つがピットストップでしょう。F1では、レースカーがタイヤやパーツを交換するため、レース中にピットイン(サーキット内に設けられた整備施設に入ること)します。フォーミュラEでも同様にピットインは行いますが、パーツ等の交換はせず、マシンそのものの乗り換えを実施。理由は、フォーミュラEカーに搭載されるバッテリーが25分程度で切れてしまうためです。つまり、フォーミュラEでは各参加チームが2台目のマシンを用意しておく必要があります。
ほかにも、エンジンや車体の大きさ、重量、予算の規模といった違いが挙げられます。もう一つ特徴的なのは、公式サイト上の人気投票で上位となったドライバーが一時的にモーターの出力を上げられる「ファンブースト」方式 が採用されていること。運転席にあるボタンを押せば、マシンが一時的な加速を得られます。このファンブースト方式を活用して、人気上位のドライバーはレースを優位に進めることが可能です。F1にはない、ファンを意識したユニークな制度と言えるでしょう。
フォーミュラEカーは「世界最高の電気自動車」
実はもう1つ、F1とフォーミュラEには明確な違いがあります。それは、企業がしのぎを削って開発したパワフルなエンジン、空気力学を駆使した美しい車体を世界中に向けて披露し、世界中の観客を魅了する「世界最高峰のカーレース」というのがF1の位置付けであるのに対し、フォーミュラEはメインコンセプトに「サスティナブル(持続可能)」を掲げ、昨今の地球温暖化の排出削減など環境保護を目的の1つに打ち出している点。ガソリンではなく電気を動力として、可能な限り二酸化炭素の排出を減らすモーター、あるいは車体等を開発することで、世界の「EV開発の先導役」としての役割を果たそうとしているわけです。
F1ではレース中に頻繁にタイヤ交換が行われますが、フォーミュラEではタイヤ交換はありません。また、フォーミュラEでは前後のウイングなどのパーツやサスペンションも、すべての車両が同じものを使うことが義務付けられているので、各チームの車のデザインを楽しむコアなF1ファンからすると、やや物足りないかもしれません。フォーミュラEでは、モーターの動力源も英国のスポーツカーメーカー・マクラーレン社やソニーなどが共同開発したバッテリーが使われていますが、これらはすべて“環境保護”がベース。今後も、「世界最高の電気自動車」として、最新のエコ技術が活用されていくことになるでしょう。
日本のEV普及率は2%以下
脱炭素に向けた動きは世界中で行われています。もちろん、日本も同様です。日本では二酸化炭素排出量のうち、自動車を含む運輸部門の排出量が全体の17.7% (2020年度)を占めているため、自動車の脱炭素化が急務です。それを達成するための手段の1つがEV。日本自動車販売協会連合会によると 、2022年の国内自動車販売の比率は、ガソリン車が42.22%、ハイブリッド車が49.0%、EVが1.42%。EVも増加傾向にありますが、まだ本格普及には遠く及ばないのが現状です。
ちなみに、2022年(1~12月)の新車販売に占めるEVの比率 は、欧州が12.1%、米国が約5.8%、中国が20%とのこと。EVの普及が進む欧州では2021年7月、ハイブリッド車を含むガソリン車の販売を事実上禁止する規制案を発表しましたが、2023年3月には環境負荷の低い液体燃料で走る車の販売は容認する規制緩和を打ち出す など、業界と規制委員会の間で揺れています。ただ、EVが次世代のエコカーの中心として普及が進むことは間違いないと言えそうです。
2023年6月、今後の日本のEV事情に影響しそうなニュースが業界を駆け巡りました。トヨタ自動車が次世代自動車の電動化や電池などの技術開発の方針や進捗状況を発表 したのです。トヨタ自動車は、EV開発においてやや他社の後塵を拝していました。しかし、この発表に加えて、2カ月前の4月に中国・上海で開催された「上海国際自動車ショー」ではEV専用ブランドの「TOYOTA bZ(トヨタ ビーズィー)」で新型EV2車種を発表 するなど、電気自動車の開発に本腰を入れているようです。
これまで、日本国内でEVの普及が進まなかった問題として、車自体の価格が割高であるほか、充電設備の設置が進まなかったこと、EV車の充電に時間がかかることなどが挙げられます。政府は2030年までに急速充電器を現状の4倍となる3万基を設置する方針 を掲げていますが、業界の巨人・トヨタ自動車の本格参戦によって、ますますEV普及に向けたインフラ整備が加速することが予想されます。また、電気自動車の中で最もハイコストなモーター(エンジン)の小型化や低価格化が進むでしょう。
EV関連に投資する投資信託も
株式投資など投資の観点でも、小型化や低価格化を促す部品や技術の開発に成功した企業には注目が集まりそうです。関連銘柄として、テスラや中国の電気自動車メーカーであるBYD、トヨタ自動車といった完成車メーカーに加えて、EV向け比率が高い部品メーカーや、電気自動車向けの電池や部品などを生産、開発している会社は、今後折に触れて注目されることが予想されます。
また、トヨタ自動車は2026年以降、グループで開発した「全固体電池」と呼ばれる新型の電池を自社EVに搭載する予定です。全固体電池は、現在、商用に向けて業界注目の新型電池で、まだ商用に向けたいくつかのハードルがあるようです。もし、EVに搭載されるリチウムイオン電池に取って代われば、「全固体電池」関連が株式市場の大きなテーマとして浮上する可能性もありそうです。
将来的なEVの普及に向けて有望な銘柄への個別投資以外にもEV関連銘柄に投資する投資信託などを購入する手もあります。長期的にみればEVの普及は確実な情勢だけに、資産形成の一部に加えてみるのもおもしろいかもしれません。