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「生成AIでビジネスの常識を覆そう。」第2回:生成AI担当者を全部署に配置:変革の波を起こす

前回「第1回:役員向けハンズオンレクチャー:トップが動けば組織が動く」で、生成AIの活用を社内で推進するためのトップダウンアプローチをご紹介しました。しかし、活用を推進するためには、ボトムアップアプローチも大切です。当社では、全部署に生成AI担当者を配置し、生成AIの活用推進を行っています。今回は、生成AI担当者設置の目的と、その具体的な活動内容、および成果についてご紹介します。


生成AI担当者設置の目的

前回も記載した通り、2023年8月にチャット型生成AIを導入した当初、当社内での生成AI利用率は10%以下でした。これまでも社内ウェビナーや生成AIコンテストの実施により生成AIの活用推進を図ってきました。社内ウェビナーや生成AIコンテストの参加率は高く、またコンテストでは有用なユースケースがいくつも創出されたのですが、全社的な利用率はぱっとしません。

社内で色々とヒアリングを進めていくと、利用率が上がらない原因としては、以下の2つが考えられました。

①    生成AIの話は有益だが、自分の業務にどのように活用できるかわからない。
②    自分は積極的に活用し、業務効率化もしているが、周りの人に発信はしていない。

まず①について。ウェビナー等には参加するが、実際に利用しない社員がこのパターンに該当します。ウェビナーは全社員の半数近くが参加する回があるなど、毎回非常に盛況なのですが、実はその参加社員が実施にどのようなモチベーションで参加しているのかを分析していませんでした。複数の社員に話を聞いていくと、活用方法をイメージできない社員が多くいることがわかりました。
続いて②について。生成AIコンテストに参加し、業務効率化・高度化のためのユースケースを考え、実行しているものの、周囲に発信をしていないため、所属部内で生成AIへの理解が広がっていない、とても残念なケースが存在することもわかりました。

これを解決するために、全部署に生成AI担当者を配置する、ということを決定しました。
①のようなケースでは、各社員の業務を理解したうえで、生成AIの活用方法を一緒に検討する、伴走型の支援が必要になりますが、運営サイドで全社員の業務を理解するのは不可能です。しかし、同じ部署に生成AI担当者がいれば、業務内容を理解したうえでの生成AI活用支援が可能になります。
また、②のケースでも、既に積極的に活用している社員のユースケースを生成AI担当者が拾い上げ、部内での共有を推進することで、①の社員と②の社員を結びつけることができます。
つまり、生成AI担当者が、所属部内での生成AI活用推進のハブとなり、業務効率化・高度化が全社的に推進できると考えました。


生成AI担当者の任命方法

当社では2024年6月に、全部署に生成AI担当者(生成AIナビゲーター)を配置しました。
では生成AI担当者を設置するだけで、前述のような活用推進が勝手に進むのでしょうか。 

筆者は、過去にもいくつかCoE組織(Center of Excellence:専門領域において知見のある各部署の人材を1カ所に集約した部署)の運営に携わったことがあります。組織が上手く機能しないケースとして多いのは、会社としての裏付けがないまま担当者として任命され、善意で組織に参加しているケース。挙手制で担当者を募るため、本人のやる気は高いのがメリットです。一方で以下のようなデメリットがあります。

・部署の網羅性が低い
→手を挙げる担当者がいない部署は参加しない
・活動への強制力がない
→善意で参加しているため、活動への参加度合は担当者任せになる
・活動に対する上司の理解が得られない
  →活動に対する会社の裏付けがないと、CoE組織の活動への上司の理解が得にくくなります。結果として、業務時間内にこれらの活動を行えなくなるかもしれません。

人事発令等により担当者を任命、もしくはそれに類するような一定の強制力をもった方法によって「生成AI担当者」という役割を会社が認め、責任をもって活動してもらうことが、CoE組織の活動を成功させるためにはとても重要です。


具体的な活動内容

各部署で任命された担当者は、年度初に所属部内でのユースケースの創出や利用促進の計画を考え、生成AI活動計画書を作成します。運営部門では作例された活動計画書をもとに、全部署の生成AI担当者と四半期ごとにミーティングを実施し、進捗状況の確認や担当者としてのお悩み相談を受け付けています。

生成AI活動計画書は、最低限の必須記載事項だけを運営部門で設定し、基本的には全て生成AI担当者に作成を一任しています。各部署で有効な活用推進方法は、その部署に所属している社員が一番よく知っているはずです。運営部門は、あくまでも生成AI担当者のサポートに徹するべきです。

では、各生成AI担当者は、所属部内で実際にどのような活動を行っているのでしょうか?ここでは、筆者がヒアリングしたいくつかの活動内容をご紹介します。

・社内で用意されている生成AIの使い方を個別にレクチャーしている。
・定期的に開かれる部内会議で、生成AIの得意・不得意領域を解説したり、部内外の生成AI活用のユースケースを紹介している。
・部内の各チームに活用状況を個別にヒアリングし、活用できそうな業務があれば、一緒になって活用方法を考える。

このようなボトムアップのアプローチや、前回ご紹介したトップダウンでのアプローチが功を奏し、月間の利用率は7割を超えるまで(2024年8月現在)になっています。 

ボトムアップでの生成AI活用推進がなかなか進まずに何でいる企業のみなさま、会社として裏付けをもたせた生成AI担当者の設置というのも一つの手段として検討してみてはいかがでしょうか。

詳しく話が聞きたい、自社の生成AI活用の取り組みも話したいなど、法人の読者の方からのコンタクト(クリエイターへのお問い合わせ)をお待ちしております。※営業目的でのコンタクトは固くお断りします。


【筆者紹介】
山田智久:大手証券会社入社後、ネット銀行立ち上げを経て、大手小売業にて複数の大型DXプロジェクトに従事。2022年よりニッセイアセットマネジメントにて資産運用に関するDX業務を担当。CFP🄬認定者。UX検定™保有。


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