「コスパ」を重視するあなたへ~インデックス投資にジェネリックの処方箋~
はじめに
最近は、つみたてNISAの人気もあり、インデックスファンドを活用して資産形成に取り組む人が増えてきました。ほとんどの方が、日経平均や東証株価指数(TOPIX)の名前を耳にしたことがあることでしょう。
ほかにも、さまざまなインデックスがありますが、インデックスを利用するには「コスト(使用料)」がかかっていることをご存じですか?
「インデックスファンドで積立投資しているけれど、インデックス自体をあまり意識したことがなかった」という方も多いかもしれません。そこで、今回はインデックスについて少し深掘りしてみましょう。
深掘り!日本のインデックス事情
誰がインデックスを管理しているかご存じでしょうか。
運用会社と思われるかもしれませんが、実際は運用会社ではなく、インデックス提供会社が日々の維持管理(*1)を行っています。運用会社のグループ会社がインデックスを提供する例もありますが、運用会社にとって都合の良い処理がなされる可能性もゼロではないことから、資本関係のない中立的な存在のインデックス提供会社がその役割を担うのが一般的です。
日本でよく知られているインデックス提供会社としては、国内株式であれば、日経平均を公表する日本経済新聞社やTOPIXを算出するJPX総研(*2)、海外株式であれば、MSCIやS&Pグローバル・マーケット・インテリジェンス(以下、S&P)、FTSE Russellなどがあります。
それでは、インデックスの種類はいくつあるでしょうか。日本の公募インデックス投信を対象に調べてみると、国内株式では15種類、海外株式では77種類あることがわかりました。(*3)
一見多い印象を受けますが、資産残高を基にインデックスのシェア内訳をみると、国内株式では、日経平均とTOPIXが合わせて全体の約97%と、そのほとんどを占めています。(図1参照)
海外株式でも同様です。特にグローバルインデックスに焦点を当てると、MSCI(コクサイ指数とオールカントリーワールド指数)とFTSE Russell(オールキャップ指数と先進国指数)が主要なシェアを占めており、その他の指数は全体の2%程度しかありません。(図2参照)
なお、グローバルインデックスだけでなく、単一国や地域別インデックスに対象を広げたとしても、MSCIとS&Pの2社だけで全体の80%超を占めていることがわかります。(図3参照)
インデックスファンドでは、運用会社がインデックス提供会社に対して、インデックス使用料(*4)を支払う必要があります。しかし、前述のように、一部のインデックスの寡占状態が続くとインデックス間の競争が働かず、使用料が高止まる(*5)要因となり得ます。また、インデックスの種類が限定的だとインデックスファンドのラインナップも代り映えのしないもので溢れ返ることになるでしょう。
特定インデックスへの偏りについては、金融庁のプログレスレポートでも指摘されるところです。(*6)
海外に目を転じてみると
ここで海外に目を向けてみましょう。主に欧米では、新興のインデックス提供会社(*7)が登場し、様々なインデックスを開発・提供しています。欧米の運用会社では、新興勢力のインデックスを新たに採用したり、それまで採用していたインデックスから乗り換えるような動きが盛んです。
【世界のインデックス提供会社】
(先行)MSCI、S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンス、FTSE Russellなど
(新興)ソラクティブ、リフィニティブ、ファクトセットなど
インデックスの競争が進む中、インデックス提供会社の役割も変化しています。
【インデックス提供会社の役割の変化】
① インデックス提供会社が開発したインデックスを、運用会社が使用料を支払って利用。
② 運用会社がインデックスのアイデア・運営方針(メソドロジー)を立案し、インデックス提供会社がその方針に基づいて指数を維持管理。①に比べて、使用料低め。
③ 運用会社とインデックス提供会社が共同でアイデア・メソドロジーを創出し、指数を構築。指数の維持管理をインデックス提供会社が担当。使用料は両社の合意内容次第。
ケース①は、運用会社とインデックス提供会社の従来の関係です。ここでは、先行インデックス提供会社がマーケットシェアの大半を占めているため、新興のインデックス提供会社は、メソドロジーもパフォーマンスもほぼ同じインデックスを安い使用料で提供することで市場進出を図っています。
特に、インデックスの構築手法がシンプルで、維持管理も容易なインデックスの場合、大手インデックス提供会社と新興勢力との間にパフォーマンスの差はほとんど生じません。運用会社にとっては「同様の運用成果が見込めるなら、より費用対効果の高いインデックスを」という動機が働き、後発インデックスを新たに採用、または途中から乗り換える動きが進んでいます。
なお、②では運用会社が主体的な役割を果たし、③はインデックス提供会社が運用会社の領域に一歩足を踏み入れるケースといえます。このように、海外のインデックスファンドでは、参加者間の競争を背景に市場の構図が変わりつつあります。
インデックスの信頼性を確認するには
ここで、長く利用されているインデックスを先発医薬品にたとえると、新興勢力による後発インデックスはジェネリック医薬品と捉えることができます。長期的に使用するのであれば、ジェネリックは賢明な選択といえるでしょう。
一方、みなさんの中には後発のインデックスに不安を感じる人もいるかもしれません。インデックスには信頼性が求められますが、投資家はどうすれば、それを確かめることができるのでしょうか。運用会社の説明資料や開示資料には、インデックスの過去の推移やインデックス提供会社の情報が記載されています。しかし、それだけでは十分ではないかもしれません。
実は、海外にはベンチマーク規制(*8)というものがあります。これは、例えば、インデックス提供会社が、個々のインデックスの運営方針にしたがって、一貫した管理を行っているか、などについて規制当局が基準を定めるものです。それらの基準を満たしたインデックス提供会社(とそのインデックス)だけが当局によって承認される仕組みとなっています。このベンチマーク規制に則っているかどうかが、信頼のおけるインデックスかどうかを見極める、ひとつの判断材料となるでしょう。
インデックス投資にジェネリックというアプローチを
最近のジェネリック医薬品会社の不祥事により、ジェネリックに対してネガティブな印象を持つ人もいることでしょう。しかし、先発医薬品と同等の有効性・安全性を有し、品質管理も十分なジェネリック医薬品が大半と考えられます。厚生労働省の調査によると、後発医薬品の使用割合は全国平均で約8割に上ることが報告されています。(*9)
特に長期の治療が必要な場合、高価格の先発医薬品を使用すると、治療費の総額が相当な金額に上ることも考えられます。代わりに、ジェネリック医薬品を利用することで長期の治療が可能となることから、ジェネリックの使用割合が8割に上ることも理解できます。
同じことが長期の資産形成にも当てはまるでしょう。ジェネリック的な後発インデックスを長期の資産形成に活用することは、費用対効果の観点から賢明な選択といえるかもしれません。新たに投資を始める人に限らず、これまで高めのインデックスファンドで積立投資を続けてきた投資家にとっても検討の余地は十分あるのではないでしょうか。
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