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【新NISA】特定口座・一般口座から新NISA口座への移行はできる?

(2024年2月:最新情報を反映)

2024年から始まった新NISAは貯蓄から投資へのシフトを加速させるため、旧NISAよりも年間投資枠が拡大されたり、非課税投資期間が無期限になったりと、大きく変わった点がいくつかあります。

この記事では、現在特定口座・一般口座にある資産を新NISAに移管することができるのかについて解説します。


そもそも特定口座とは

Q:そもそも特定口座とは?
A:特定口座とは課税口座の一種で、確定申告が不要になる口座です。

証券口座には主に「特定口座」「一般口座」「NISA口座」の3種類があり、特定口座と一般口座は課税口座、NISA口座は非課税口座です。通常、証券会社や銀行で口座を開設したり、商品を購入したりする際に特定口座か一般口座が選べ、別途手続きすればNISA口座を開くこともできます。

特定口座は一般口座と異なり、上場株式等の取引から生じた年間損益を金融機関が計算してくれます。特定口座には「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の2種類があります。「源泉徴収あり」を選択すると金融機関が納税も代行するため、利益に対してかかる20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)の税金が自動的に引かれ、確定申告が不要になります。[注1]

「源泉徴収なし」を選択した場合は、金融機関が作成した「年間取引報告書」をもとに、自身で確定申告を行う必要があり、利益に対して同様に課税されます。

一方、一般口座は年間損益の計算から確定申告までのすべてを投資家自身で行う必要があります。

[注1]国税庁「株式・配当・利子と税」


特定口座・一般口座から新NISA口座には移管できない

Q:特定口座・一般口座から新NISA口座への移管はできる?
A:新NISAで運用できる商品は新NISA口座で新規に購入したものだけなので、特定口座・一般口座で保有している商品を新NISA口座にそのまま移管することはできません。

すでにNISA口座以外で投資信託や株式を保有している場合、証券会社や銀行で特定口座か一般口座を開設しています。そこで運用している商品を新NISA口座で運用したい場合は、いったん売却してから新NISA口座で同じ商品を新たに購入する必要があります。ただし、特定口座や一般口座で保有している商品を売却すると、利益に対して課税されます。また、開設している口座によっては確定申告が必要になる場合もあります。

新NISA口座で買い直すべき?

すでに特定口座や一般口座で運用している金融商品を非課税で運用したい場合、いったん売却して新NISA口座で新たに買い直す必要があります。ただし、現在の収益状況や商品の性質などによって判断が分かれる場合があります。以下、ケース別に解説します。

「含み損」がある場合

Q:現在は特定口座・一般口座で含み益がほぼない、もしくは含み損の状態だが、売却して新NISAに資金を移して投資する方がよい?
A:将来的に値上がりしそうと判断できる銘柄であれば、新NISA口座での買い直しを検討してもよいかもしれません。

新NISA口座で買い直しをする場合、特定口座や一般口座で保有している商品を売却すると、利益に対して20.315%が課税されます。[注1]
含み損であれば課税はされませんが、含み益があってもなくても販売手数料等のコストが発生する点には注意が必要です。

税金や手数料を支払ってまで、一度商品を売却し新NISA口座で買い直すことに踏み切る勇気が出ない人もいるかもしれませんが、将来的に値上がりが期待できる銘柄であれば、新NISAでの買い直しにはメリットを享受できる可能性があります。

新NISAでは成長投資枠の非課税保有限度額は1,200万円(年間240万円)と現行NISAから投資枠が大幅に拡大し、非課税保有期間も無期限になりました。以前のように非課税期間を気にせず運用を継続できるので、非課税のメリットがより大きくなったといえるでしょう。[注2]

旧NISAと新NISAの比較

表

[注2]金融庁「新しいNISA」

「含み益」がある場合

Q:現在は特定口座もしくは一般口座で含み益がある状態だが、売却して新NISAに資金を移して投資する方がよいか?もしくは売却せずに特定口座・一般口座で継続保有するのがよいか?
A:課税を考慮しても売却して新NISA口座で運用した方が有利になるケースと、新NISAに資金を移さない方が有利になるケースがあります。

NISA口座で運用する最大のメリットは非課税効果の恩恵を受けることができる点です。
特定口座・一般口座で保有している銘柄に大きく含み益がある場合や、将来的にそれほど値上がりしないだろうと判断する場合は、非課税効果のメリットよりも、新NISA口座に資金を移すデメリットの方が大きい場合があります。
この場合、そのまま現在の口座で運用を続ける方が有利になります。

将来的に値上がりしそうな銘柄を保有している場合でも、売却時に課税されるとその分投資元本が少なくなり、複利効果が減少するので、売却しない方がよいのでは?と思う人もいるかもしれません。

そこで、特定口座で運用し続けた場合と、売却して新NISAで運用した場合の運用益を比較してみましょう。

条件は以下の通りとします。

● 投資元本100万円で利回り3%の投資信託を購入
● 現在の評価額は150万円(50万円の含み益)
● 投資期間は20年間
● 手数料等は考慮しない

1.特定口座・一般口座で運用し続けた場合

特定口座・一般口座で投資を継続する場合、現在の評価額150万円が20年間運用して評価額270万円となり、この時点で売却するものとします。
投資元本は100万円なので利益は170万円、これに税率20.315%をかけると税額は約35万円になります。

つまり、手元に残るのは270万円-約35万円=約235万円です。

2.特定口座・一般口座の資産を売却し、新NISA口座で買い直して運用した場合

新NISA口座で運用するためには、特定口座・一般口座の資産を売却して、新NISA口座で買い直す必要があります。投資元本が100万円で現在の評価額が150万円なので利益は50万円。これに税率20.315%をかけると約10万円、手元に残るのは150万円-約10万円=約140万円です。
この約140万円を新たな投資元本とし、新NISA口座の成長投資枠で20年間運用して評価額が約253万円となり、この時点で売却するものとします。

新NISA口座の成長投資枠での運用であれば非課税となるため、約253万円がそのまま手元に残る計算になります。

したがって、この条件下ではいったん売却して買い直した方が手元に残る金額が増えて有利になります。

特定口座での運用継続がおすすめなケース

Q:特定口座で運用を継続した方が有利なのはどのようなケース?
A:新NISAの非課税投資枠を別の商品の購入で使い切れるケースです。

新NISAの非課税投資枠を別の商品の購入で使い切れる場合、特定口座で保有する商品はそのまま特定口座で運用を継続することをおすすめします。新NISAの非課税投資枠を超えた分は特定口座での運用になり、売却益に課税されます。現状特定口座にある銘柄はそのままにしておき、これから追加で購入していく銘柄を新NISA口座の枠内で購入するといいでしょう。

特定口座の資産を売却して新NISAの買い直しがおすすめなケース

Q:特定口座の資産を売却して新NISA口座で買い直した方が有利なのはどのようなケース?
A:将来値上がりが予想される銘柄をずっと保有するつもりの方、特に高配当の株式に投資する方です。
この先値上がりが予想される銘柄をずっと長く保有するつもりなら、いったん売却して新NISA口座で買い直した方が長い目で見れば有利でしょう。高配当銘柄ならなおさらです。特定口座で運用を続けると譲渡益だけでなく配当金にも約20%の税金がかかりますが、NISA口座なら配当金もずっと非課税で全額受け取れます。長期になればなるほどその恩恵は積み重なって大きくなるので、新NISA口座で買い直した方が手元に残る金額も大きくなります。また、非課税の年間限度額が使い切れず余っている場合も、買い直しを検討するといいでしょう。

特定口座・一般口座から新NISA口座での買い直しはいつがおすすめ?

Q:特定口座・一般口座の商品を売却して、新NISA口座で買い直す場合のタイミングは?
A:新NISAの非課税投資枠で運用するなら、できるだけ早くNISA口座での運用を開始した方が運用期間も長くなり、配当金への非課税などの税制メリットをより多く受けることができます。ただ、損益状況や銘柄の配当利回り、新NISAの利用状況などによっても変わってくるので、総合的に判断することが大切です。

まとめ

特定口座・一般口座から新NISAへの移管はできませんので、新NISA口座で運用を継続したい銘柄がある場合は、一度売却して新NISA口座で再度買い直す必要があります。その場合、売却時に約20%課税されますが、新NISAで買い直すことによってメリットが大きくなるケースもあります。一方、元の口座で運用を継続した方が有利なケースもあり、一概に断定はできません。ただ、新NISAをうまく活用すれば、資産を有利に増やすことが期待できます。ご自身の損益状況や将来的な値上がり期待度、新NISAの利用状況などをよく確認して判断するようにしましょう。

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