こども家庭庁とは?いったい何が変わっていくのか、詳しく解説
こども家庭庁は、すべてのこどもと、子育て当事者に必要な支援を届けるための施策を立案・実行する行政機関です。常にこどもや子育て当事者の目線になり、現場が必要とする支援を提供することを重視しています。また、各種団体と連携し合い、支援の幅を広げる役割も担っています。
2023年4月1日より、新たな行政機関として「こども家庭庁」が設置される予定です。
こどもや若者が自分らしく成長できる社会を目指すための施策のひとつですが、どのような役割を持った機関なのか、どのような理念、姿勢のもとに運用されるのか、よくわからないという人は少なくありません。
この記事では、新たに設置されるこども家庭庁について、こども家庭庁の基礎知識や必要性、基本理念などについてわかりやすく解説します。
こども家庭庁とは
こども家庭庁とは、2022年6月22日に公布された「こども家庭庁設置法」に基づいて設置される行政機関です。
こども家庭庁設置法では、「心身の発達の過程にある者」を「こども」と指しており、こどもが自立した個人として、ひとしく健やかに成長することができる社会の実現を目標として掲げています。
同法の主軸となる施策のひとつが今回設置されるこども家庭庁で、こどもにとって何が大切かを、こどもの目線になって考えながら、政府の仕事をリードしていきます。
なぜこども家庭庁ができるの?
2023年に新しくこども家庭庁が設置されることになった理由は、大きく分けて3つあります。
1. 少子化問題
厚生労働省の発表によると、2021年の出生数は81万1,604人でした。前年の84万835人から2万9,231人減少しています。日本の出生数は1949年をピークに減少傾向が続いており、少子化が深刻な社会問題となっています。[注1]
[注1]厚生労働省「令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai21/dl/gaikyouR3.pdf
2. いじめ・不登校問題
学校に通うこどものいじめ・不登校問題は、長期的に見ると増加傾向にあります。
中学校・高等学校でのいじめ認知件数はほぼ横ばいで推移していますが、小学校では2013年度より右肩上がりに増加し、2021年には約50万件と、直近9年間の統計で最も多い数字となっています。[注2]
また、新型コロナウイルスの感染回避によるものを除く長期欠席者数は小中学校合わせて約41万人おり、うち不登校者数は約24万5,000人に上っています。[注2]
いじめや不登校の問題を抱えるこどもやその家庭では、こどもの居場所探しに苦心したり、将来を不安視したりする人も少なくありません。
[注2]文部科学省「令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」
https://www.mext.go.jp/content/20221021-mxt_jidou02-100002753_2.pdf
3. 貧困問題
コロナ禍の影響もあり、長期にわたって景気が停滞している日本では、格差がますます広がっています。経済的な困窮は、こどもの食生活や教育に大きな影響をもたらす原因のひとつとなっています。
こども家庭庁では、常にこどもの最善の利益を第一に考え、こどもに関する取組・政策を真ん中に据えた社会を「こどもまんなか社会」と呼び、これの実現を目指すことをひとつの大きな目標に掲げています。[注3]
[注3]内閣官房「こども政策の新たな推進体制に関する基本方針~こどもまんなか社会を目指すこども家庭庁の創設~」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kodomo_seisaku/pdf/kihon_housin.pdf
こども家庭庁の役割
こども家庭庁の役割は、大きく分けて「司令塔機能」「各府省から移管される事務」「新たに行う・強化する事務」の3つに区分されます。
司令塔機能
これまで各府省庁に分かれていたこども政策に関する総合調整権限が、こども家庭庁に一本化されます。
たとえば、内閣府子ども・子育て本部が権限を有していた「少子化対策及び子ども・子育て支援」や、厚生労働省管轄の「児童虐待防止対策」などが該当します。
また、これまで司令塔不在だった就学前のこどもの育ちや放課後のこどもの居場所についての主導権も握ることになります。
加えて、こどもや子育て当事者、自治体などの現場からの意見を政策立案に反映させるのもこども家庭庁の役割です。
各府省から移管される事務
こども家庭庁の設置にともない、各府省が担っていたこども政策に関する事務が移管されます。
内閣府からは政策統括官が担っていたこども・若者育成支援やこどもの貧困対策に関する事務など、文部科学省からは総合教育政策局が所掌する災害共済給付に関する事務などが移管され、こども家庭庁で請け負うことになります。
新たに行う・強化する事務
こども家庭庁の設置にあたり、新たに実施または強化する内容としては、こどもの性的被害の防止、CDR(こどもの死亡原因に関する情報の収集・分析・活用などを基にしたこどもの死亡検証)の検討、プッシュ型支援を届けるデジタル基盤の整備などが該当します。
こども家庭庁とこども政策の推進
こども家庭庁が主導して推進していくこども政策の基本理念と基本姿勢について解説します。
こども政策の基本理念
こども政策の基本理念は大きく6つのポイントに分かれています。分かりやすい言葉で抜粋します。
1.こどもや、子育て当事者の視点に立った政策の立案
こどもは社会の支えを受けながら、自分のことを決めたり、意見を伝えたりして自立に向かう存在であり、あくまでも主体として捉えています。
そのためこども家庭庁では、こどもの声に応じて、こどもにとって何が一番いいかを考え、適切な政策を立案するとしているのです。
また、こどもだけでなく、子育てしているすべての人がゆとりを持ってこどもと向き合うためのサポートも実施します。
2.すべてのこどもが健やかに、幸せに成長すること
すべてのこどもが、命を守られ、その能力を十分に延ばせるようサポートします。
そのため、妊娠前から大人になるまでの間、健康や生活を支え、きちんとした教育を受けられる環境を整えることも重要です。
また、すべてのこどもが安全で安心して過ごせる居場所を持ち、そこでさまざまな体験をし、幸せな状態で成長していけるよう、国、家庭、学校、職場、地域が一丸となって協力します。
3.誰ひとり取り残さない支援
誰ひとり取り残されないよう、必要な支援をすべてのこどもに対して行います。
虐待や貧困などによる格差をなくし、こども全員が社会に参画できるようにします。
4.切れ目のない支援
こども家庭庁では、こどもの年齢によってこどもや子育て家庭への支援が途切れることがないよう、切れ目のない支援を目指しています。
また、こどもが抱える問題(いじめや不登校など)の悩みに応じて専門家によるサポートを行うなど、問題解決まで途切れのない支援を行います。
5.待ちの支援からプッシュ型支援、アウトリーチ型支援への転換
困難や悩みを抱えているこども、家庭ほど、周囲に助けや支援を求めるのが難しい場合もあります。
こども家庭庁では、助けを求めているこども、家庭が声を上げなくても、必要な支援が十分に行き渡るよう、プッシュ型支援およびアウトリーチ型支援への転換を図ります。
たとえば、こどもにとって適切な場所に出向き、状況に応じた支援を行う訪問支援を充実させたり、SNSなどを活用して積極的に支援に関する情報発信を行ったりします。
6.データ・統計に基づく政策立案
これまでのデータや統計をフル活用すると共に、こどもから聴取した意見なども取り入れて、エビデンスに基づく政策立案を行います。
エビデンスに基づいて立案された政策は、評価と改善を繰り返し、ブラッシュアップを目指します。[注4]
[注4] 厚生労働省「こども政策の新たな推進体制に関する基本方針のポイント」
https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000897583.pdf
こども家庭庁の基本姿勢
こども家庭庁では、基本理念をもとに活動や立案を行うにあたり、以下3つの基本姿勢を大切にしています。
こどもの視点、子育て当事者の視点
地方自治体との連携強化
市民社会との積極的な対話・連携・協働
1は、社会の主役であるこどもや、そのこどもを育てる保護者(当事者)の目線で捉える「こどもまんなか」の考え方です。
こどもや若者の意見もさることながら、子育て当事者の意見も政策に反映することで、今求められている支援を正確に把握します。
2は、こどもや子育て当事者にとって最も身近な地方自治体としっかり連携・協力し合い、スムーズな支援を提供することです。
必要と判断した場合は制度化も行い、先進的かつスピーディな取り組みを実現します。
3はNPO等の民間団体や民生・児童委員、青少年相談員、保護司等とのネットワークを強化することです。
これらの団体との連携を強めることで、支援の選択肢を増やし、よりニーズに合った幅広いサポートを行います。
まとめ
少子化やこどものいじめ・不登校等の問題、こどもの貧困など、こどもに関するさまざまな問題を抱えている現代日本では、こども政策を推進する専門的な行政機関が必要です。
2023年4月1日より設置予定のこども家庭庁は、こどもやその保護者の目線になり、本当に必要な支援をすべてのこどもとその家庭に届ける役割を担っています。
ただ、こども家庭庁単体ではすべてのこども・子育て家庭に必要な支援を送り届けるのは難しいため、自治体や企業など、さまざまな団体と連携してこども施策に取り組む必要があります。
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