開設済みのNISA口座の残高はそのまま新NISA口座に移るの?~アセマネ会社によるNISA制度改正のポイント解説(9)
前々回の『新NISA制度開始に向けて、法令・政令・省令が定められました ~アセマネ会社によるNISA制度改正のポイント解説(7)』を読んだ方から、以下の質問を受けました。
「既存のNISA口座の残高がそのまま新NISAの口座残高に移るのでしょうか?」
いえ。そうではありません。
既存の、すなわち旧制度のNISA口座の残高はあくまで旧NISA制度の残高として扱われ、新NISA口座の残高とはなりません。
ですから、すでにNISA口座で100万円の投資をされている方が、新NISA制度開始時点で「残っている非課税枠は1800万円-100万円=1700万円」というようなことにはなりません。
旧NISA制度と新NISA制度は切り離されていますので、誰もが新NISA制度スタート時には新NISA制度の生涯の非課税枠は1,800万円となります。
「もう、自分は300万円分、(旧NISAで)非課税枠を使ってしまっているからな」と失望(?)する必要はなく、むしろ早くからNISAを使っていたことで新制度の1800万円とは別に非課税枠を持っていることを誇る(?)べきなのかもしれません。
残高のロールオーバーはできる?できない?
関連して、いわゆる「ロールオーバー」についても、確認しておきましょう。
「ロールオーバー」とはNISA口座の非課税期間が終了したときに、投資している資産を、非課税期間の翌年のNISA口座に持ち越す制度です。
例えば、2018年に一般NISAで投資した資金について非課税期間の5年が満了したので、2023年初に今年の一般NISA口座に移したという方も多数いらっしゃるはずです。
今年の終わりには、2019年に一般NISAで投資した資産について非課税期間が満了します。
例えば、この2019年に投資した資金が150万円になっていたとしましょう。
これまでであれば、(申請すれば)2024年のNISA口座に150万円をそのまま移行(ロールオーバー)することができましたが、2024年はそうはいきません。
前述したように、旧制度と新制度は別ものだからです。
2024年からは新制度になるのですから、2019年に投資した旧制度の残高のロールオーバーはできないということになります。
今後、旧制度の非課税期間が順次終了していきますが、その際も新NISA口座に移ることはなく課税口座に移りますので、“課税口座に移行後”の損益には課税されることになりますので注意が必要です。
これは一般NISAだけでなく、つみたてNISAも同様で、(ずいぶん先ではありますが)非課税期間の20年が満了する都度、課税口座に移行することになります。
年末に2023年のNISA口座(旧制度)を廃止していなかったら、自動的に2024年のNISA口座が出来上がるってこと
では、何が自動的に新NISAに移行するのでしょうか。
移行という言い方が良くないのかもしれません。
2023年のNISA口座について、年末まで持っていた(廃止の届出をしていなかった)ら、あらためて新NISA口座の開設手続きをしなくても2024年から新NISAを使えるということです。
ただし、取扱金融機関によって諸手続きが必要な場合もありますので、2024年を迎える前に、あらかじめ取扱金融機関に確認しておいた方が良いでしょう。
税制改正大綱が出た当初は非常に賑わいを見せた新NISAの話題ですが、どうも関心が高いのは既にNISA口座を持っている人の方が多いようです。
しかし、政府の掲げる「NISA口座3,400万口座」に向けては、新規にNISA口座を開設する人が増えることが不可欠です。
新NISA制度開始まで、あと8ヶ月ちょっと。
投資未経験者に新NISAの魅力が語られる機会がこれから増えていくのかもしれませんね。
なお、今回の記事は筆者個人の見解であり、当社の公式な見解を示すものではありません。
また、税務等に関する情報は常に正確であることを保証するものではありません。必ず公式の情報源をご確認ください
投資等にあたっては各種の情報にあたり、ご自身の判断にて実行されますようお願いします。
「そもそもNISAって、どういうものかわからない。」ときには、(未だ旧NISAに関する情報ですが、)投資信託協会のウェブサイトで簡単にNISAのしくみ(「投資にかかる税金がゼロに!NISA(ニーサ)の話」(注))が解説されていますので、参考になると思われます。
(注)投資にかかる税金がゼロに!NISA(ニーサ)の話【投資信託協会】
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