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【サッカーワールドカップと経済】36年ぶりの優勝に歓喜するアルゼンチン

2022年11月20日に開幕したFIFAワールドカップ2022は、12月18日にメッシ選手を擁するアルゼンチンが36年ぶり3回目の優勝を遂げて閉幕しました。フランスとの決勝は、共に仏パリ・サンジェルマンFCに所属するメッシ・エムバペの両エースが活躍し、最後はアルゼンチンがPK対決を制しました。

日本代表も、予選グループで優勝候補のドイツ・スペインに勝利し、決勝トーナメントでは前回準優勝国のクロアチアと死闘を演じ、多くのサポーターが熱狂しました。

サッカー大国アルゼンチン

アルゼンチンは、言わずと知れたサッカー大国です。1930年開催の第一回大会(準優勝)以降、常に優勝候補に挙げられ、特に前回優勝したメキシコ大会(1986年、第13回)では、あのディエゴ・マラドーナ選手の活躍はいまだに語り草となっています。メッシ選手は、年間最優秀選手に贈られるバロンドールを最多7回も受賞してきましたが、今回の優勝で、サッカー選手が手にすることができる全ての栄誉を獲得したことになります。報道によれば、首都ブエノスアイレスのパブリックビューイング会場では10万人を超えるサポーターが歓喜にわいたようです。日本国内でも、深夜のLIVE中継を見ながら涙した方も多いはず。

経済面から見たアルゼンチン

一方、経済面から見た時にみなさんが思い描くアルゼンチンは、必ずしも良いイメージばかりではないでしょう。“アルゼンチン金融(経済)危機“が過去何度も繰り返されるなど、むしろ投資の世界ではネガティブな印象を持たれることが多いです。

2001年のデフォルト以降、徐々に財政改善

19世紀前半にスペインから独立して以降、農業や畜産業を主要産業として経済成長を遂げ、南米においてブラジルに次ぐ地位を占めてきました。ただ、1990年代後半に発生したアジア通貨危機、その後のブラジル通貨危機を契機として、景気悪化・財政赤字拡大・対外債務膨張などに直面し、2001年末、ついにデフォルト(対外債務の支払一時停止)を宣言することになりました。その後は、世界的な鉱物価格上昇が追い風となる中、2005年の民間債務再編を境に、徐々に財政改善し、国際的な信認も再び上昇しつつありました。

2018年以降は再び苦境に立たされる

しかし、2018年に入り、米ドル金利上昇を契機として、アルゼンチンからの資本流出が発生し、アルゼンチン経済は再び苦境に立たされました。アルゼンチン政府はIMF(国際通貨基金)の支援を受け入れると共に、急落するアルゼンチン・ペソを防衛するため、大幅利上げに踏み切りました。この混乱は2020年に発生した世界的なコロナショック(新型コロナウィルス蔓延を契機とする経済危機)で一段と悪化し、2020年5月に再び債務不履行状態に陥りました。2022年5月、主要債権国会議(“パリクラブ”)で、滞っている債務返済期限を2024年9月まで延ばすことが合意されましたが、依然として不透明な状況が続いています。

2023年は大統領選挙も予定

最近発表された経済指標によれば、10月の消費者物価指数(CPI)は、前年比88%(前月比6.3%)上昇し、国民生活への影響が甚大となっています。また、アルゼンチン・カトリック大学が公表したレポートによれば、アルゼンチンの貧困率は43%に上り、中でも基礎的な食料を賄う収入がない世帯・人口を指す極貧率は8%を超えるようです。コロナショックで上昇した失業率は低下しているものの、賃金の伸び率は物価上昇に到底追いつかず、当分苦しい国民生活が続きそうです。また、来年は大統領選挙も予定されており、政治面での不安定要因となりそうです。

さいごに

このような環境下での36年ぶりのワールドカップ優勝となったわけです。日本国内でも、ドイツ・スペインの両優勝候補を破った日は、全国各地で歓喜にわくサポーターの姿が見られましたが、36年ぶりの優勝という偉業にわくアルゼンチンはそれを遥かに超える歓喜なのでしょうね。アルゼンチンは2030年に開催される第24回大会の開催地に立候補しています(ウルグアイ・パラグアイとの共同開催)。サッカーを起点として、アルゼンチン経済が回復し、国民生活が徐々に落ち着きを取り戻せると良いですね。

【筆者紹介】
由水希和:国内金融機関入社後、法人営業・トレーディング業務に長く従事。信託銀行で企業年金向け運用セールス・コンサルティング・商品開発に担当した後、2022年よりニッセイアセットマネジメントに入社。


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