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国民の健康を考えて課税!?健康対策で税収アップを狙う国々

日本の税制度は累進課税のため、年収が高い人ほど税金が高くなる仕組みです。それ以外にも日本には、少々変わった税金として温泉に入る際に課税される「入湯税」、一部の都道府県が導入している「宿泊税」などがあります。

さらに世界に目を向けると、日本では考えられないような珍しい税金がたくさんあります。今回は、そんな珍しい税金のなかでも健康対策として導入されている税金を紹介します。

【珍しい税金シリーズ】健康対策での課税

健康対策として導入される税金に共通しているのは「不健康なものに課税する」という点です。不健康なもののコストを高くすれば敬遠する人が多くなり、税収アップと国民の健康増進が図れるため、一石二鳥というわけです。

代表的な健康対策税の例としては、「たばこ税」が挙げられます。日本でも導入されているポピュラーな税金ですが、世界には以下のような珍しい健康対策税があります。


ハンガリー「ポテトチップス税」

「ポテトチップス税」は俗称で、正式名称は「国民健康製品税」です。

<主な課税対象>
・塩分
・糖分
・カフェイン など

上記のように、大量接収すると健康に悪影響を及ぼす可能性がある食品や飲料品に対して課税されます。

「ポテトチップス税」と呼ばれている理由は、ポテトチップスが課税対象となる塩分や糖分を多く含んでいるからです。2022年と2023年は、さらに課税額が引き上げられており、今後課税額がさらに高くなると見られています。

デンマーク「脂肪税」

全重量あたり2.3%以上の飽和脂肪酸を含む食品に対して課税されるのが、デンマークの「脂肪税」です。「バター税」とも呼ばれています。

<主な課税対象>
・バター
・牛乳
・チーズ
・オリーブオイル
・肉類 など

2011年に導入されましたが、この時点で「脂肪税」が導入されたのは世界で初めてでした。

デンマークは、酪農が盛んな国 であるだけに乳製品や肉類の生産量が多く、産業界や業界団体などからは反発もあったようです。

台湾「ジャンクフード税」


台湾にも健康対策税があります。通称「ジャンクフード税」と呼ばれる税金です。

<主な課税対象>
・砂糖が多く含まれた飲料
・ケーキ
・キャンディといった菓子類
・ファストフード
・アルコール など

摂取しすぎると健康への悪影響が考えられる食品として課税対象の範囲が広く、子どもの肥満率の高さが問題視されている同国の本気度が表れているといえるでしょう。

フランス「ソーダ税」

「ソーダ税」の名称になっているソーダとは、甘い炭酸飲料のことで「砂糖 税」とも呼ばれています。甘い炭酸飲料は、大量の糖分を含んでいるため、飲みすぎると肥満や生活習慣病の原因になりやすく「国民の医療費増大を抑制しつつ税収をアップさせる」という思惑によって導入されました。

これについても炭酸飲料を生産・販売している事業者からの反発があり、世界有数の炭酸飲料メーカーのコカ•コーラ社はフランスに計画していた投資計画を棚上げするなどの事態に発展しました。

日本の肥満率は男性約3割、女性約2割

世界各国が健康対策税を導入している背景には、肥満や生活習慣病の増加があります。こうした傾向は、医療費の増大を招くため、将来的に国家財政を圧迫するリスクが高まりかねません。「それを未然に防ぐ」という大義名分も立ちやすいため、新たな税金の導入に際して国民の理解を得やすい側面もあるでしょう。

次は、そんな健康対策税導入の根拠となっている「肥満率」について紹介します。2019年に厚生労働省が発表した「国民健康・栄養調査報告」では、男性の約3割、女性の約2割が肥満 状態(BMIが25以上の人)にあると報告されています。同調査では、年齢が上がるにつれて少しずつ肥満率が高くなっている傾向も見て取れます。

<肥満者(BMI≧25 kg/m2)の割合の年次推移(20 歳以上)(平成 21~令和元年)>

※肥満の判定:BMI(Body Mass Index[kg/m2 ], 体重[kg]/(身長[m])2 )を用いて判定
出典:厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査結果の概要」より編集部作成

次に世界の肥満率と日本の順位についても見てみましょう。一般社団法人日本肥満学会が発表したレポートに、人口1億人以上の国々における一定条件の肥満率ランキングが掲載されてい ます。

出典:一般社団法人日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2022」より編集部作成

このランキングを見ると、日本の肥満率は男性が7位、女性が13位です。上位に米国や中国、ロシアなどがランクインしていることにはあまり違和感がありませんが、エジプトが男女ともに上位であることには、イスラム教のラマダン(断食月)が関係しているとの指摘 もあります。

「飽食」といわれて久しい日本ですが、世界的に見るとそれほど肥満率の順位は高くなく、特に女性は自己管理のできている人が多いのかもしれません。

日本で健康対策による課税はあるのか?

先ほど紹介した珍しい税金の数々は、いずれも外国の話です。日本には、今のところ健康対策税と呼べるような税金はありません。強いていえば、冒頭で紹介した「たばこ税」くらいでしょうか。日本は、世界の肥満率ランキングを見てもそれほど上位ではないですが、「このままなら健康対策税が導入されることはない」と決めつけてしまうのは早計です。

国の財政状況は、決して良好とはいえず、2023年度の当初予算では国家財政のうち31.1%が公債金 (いわゆる国の借金)でまかなわれています。つまり借金をしなければ3割程度の予算が組めない状況なのです。この状況を改善するために国が増税を検討したとしても不思議ではありませんし、取りやすいところ、つまり国民の理解を得やすいところから取るのは今も昔も変わりません。

事実、「たばこ税」は過去に何度も増税され、今や580円のたばこ1箱のうち税額は357.61円、負担割合は約61.7% です。たばこ税の増税には反発が少ないため、今後も増税される可能性は高いでしょう。それだけに留まらず、ここで紹介したポテトチップスやジャンクフードなどに対する課税が議論されたとしても全く不思議ではありません。

今後、さらに日本の医療費が増大していくと外国の珍しい税金が他人事ではなくなる可能性があります。

見えにくいところで増税は進行中

健康対策税のように、これまでなかった税金が導入されると目立つため、増税を意識しやすいかもしれません。しかし見えにくいところで既存の税金が実質的に増税されているケースは多くあります。例えば相続時や贈与税です。2015年には、相続税の基礎控除が引き下げられて実質的に増税され、2024年には生前贈与を活用した節税スキームを使いにくくする税制改正 も施行されています。

目立ちやすい増税にばかり関心が向きやすくなりますが、こうしてひっそりと進行していく増税もしっかりとチェックしておくことが大切です。

自分の身を守れるのは自分自身だけ

増税と聞くとネガティブな印象をもつ人は多いかもしれません。しかし国の財政状況や「国民の健康を守るため」という大義名分が立つことを考えると、日本でも健康対策税が導入される可能性は十分あります。そのための対策として私たちが今のうちにできることはどのようなことでしょうか。

健康への自己投資

まず実践したいのが、自己投資です。病気になってしまうと仕事ができなくなって収入が途絶えたり、医療費負担が大きくなったりするため、経済的に厳しい状況に陥る恐れがあります。加えてQOL(生活の質)も低くなってしまうため、健康を害することで得することは何もありません。健康の維持を心がけ、積極的に自己投資をすることはコストパフォーマンスも抜群です。

資産形成

もう一つ実践したいのが、資産形成です。人生何が起きるか分からないことを踏まえ、収入が減ったり途絶えたりしたときに備えておくことは精神衛生上も好ましく、ストレスの軽減は健康増進にもつながります。

2024年1月からは、新NISAなど資産形成に向けた国の制度も整備されてきているため、まずはできることから始めてみてはいかがでしょうか。

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