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「生成AIでビジネスの常識を覆そう。」第1回:役員向けハンズオンレクチャー:トップが動けば組織が動く

2022年11月のChatGPT登場から2年弱。生成AIは、幅広いビジネスの現場に浸透し始めています。
ニッセイアセットマネジメントでは、2023年4月から生成AIの導入研究を始め、2023年8月にチャット型生成AIを導入。2024年1月には検索拡張生成(RAG)AIの利用を開始。その後も資産運用業務に特化した専用生成AIの導入などを進めてきました。

また、当社では、「生成AIの導入はゴールではなく、スタートに過ぎない」を合言葉に、社内での生成AI活用推進にも力を入れています。2023年8月のチャット型生成AI導入以降、多種多様な取り組みを行ってきました。

生成AIの進化は目まぐるしいスピードで進んでいます。このシリーズでは、当社の取り組みをオープンにご紹介します。本シリーズは、特に以下のような読者の方にお勧めです。

  • 生成AIを社内で導入したものの、活用がなかなか進まない企業のDX部門、IT部門の方

  • 一般的な利用に終始し、活用の幅が広がらず困っている企業のDX部門、IT部門の方

  • CoE組織を立ち上げたものの、活動が停滞してしまっているCoE組織のマネージャー

皆様の会社における生成AI活用に少しでもお役に立てれば光栄です。
また、詳しく話が聞きたい、自社の生成AI活用の取り組みも話したいなど、法人の読者の方からのコンタクト(クリエイターへのお問い合わせ)をお待ちしております。※営業目的でのコンタクトは固くお断りします。


トップが動けば組織が動く

生成AIの特徴は何といっても、その使いやすさ。まるで友人とメッセージのやり取りをするかのように、対話形式で高度な処理が実現できるというところでしょう。もちろん、大規模言語モデル(LLM)の仕組み自体も革新的で、attentionに代表される技術的なブレイクスルーを経て現在に至るわけですが、データサイエンスの知識やプログラムの知識が無くても、これらのモデルが利用できる点には本当に驚かされます。

専門知識が無くても、ITリテラシーに自身が無くても使える生成AIは、つまり役職年齢関係なく、全社員が使うことができるツールなのです。
それならば、全員が生成AIを正しく理解して、自分の業務に生成AIを活用してもらうことで、会社の全社員の業務を効率化・高度化することができるのではないか―当社では昨年の8月から1年間かけて、この野心的な取り組みを進めてきました。


生成AIの社内活用推進の進め方

当社では、定期的な情報発信を中心とした全社員向けのアプローチと、特定の層をターゲットとしたアプローチに分けて活用推進を進めています。
まず、全社員を「積極取組層」「興味関心層」「無関心層」の三つに分け、それぞれに最適な情報発信やアプローチ方法を考えています。

「積極取組層」は当社でのチャット型生成AIの導入が開始する前から、独自に生成AIを研究していたメンバーも含まれ、APIなどを活用し、業務の効率化や高度化に積極的に取り組んでいる層です。この層はITスキルが高く、先進的なユースケースの共有や新機能提供に関心を持つ層です。情報や機能さえ提供すれば、それに呼応してより積極的に活用してくれるため、スピード感のある対応がこの層の関心をひきつけ続けるカギとなります。

続いて「興味関心層」。大半の社員がこの層にあたると思われます。詳しくはないが、何となく生成AIについて知っている、周囲に「積極取組層」のメンバーがいて、ちょっと気になるけど難しそうで手が出せない、といったタイプの社員です。この層へのアプローチには、ボトムアップ、トップダウン双方のアプローチが必要だと考えています。主体的に生成AIの情報収集や活用方法の検討は行わないものの、少し背中を押してあげれば、積極取組層へレベルアップする可能性のある層です。まずボトムアップアプローチとして、当社では「生成AIエバンジェリスト」を全部署に配置し、エバンジェリストが、これらの層の背中を押すようなアプローチを行っています(詳しくは第二回でご紹介します)。さらに、トップダウンアプローチとして、役員向けのハンズオンレクチャーを実施し、自分の上司、部門長たちが生成AI活用に取り組む姿を見て、自ら壁を乗り越える原動力にしてもらおうと考えています。

最後に「無関心層」へのアプローチ。この層は全社員向けのセミナーに参加せず、メールも見ない層です。一方通行の情報提供では効果がなく、生成AIの活用推進に興味を持たせるのは、現実的に非常に難しいです。しかし、生成AIエバンジェリストや役員向けハンズオンレクチャーにより、自分に身近な社員が生成AIを使って業務を変革している姿を見せることはでき、これらに感化された社員が少しでも興味関心層に移ってくれることを願っています。

それぞれのアプローチを下の図にまとめました。


役員向けハンズオンレクチャーを実施したきっかけ

チャット型生成AIを社内に導入した当初、社内での利用率は伸びず、10%前後で低迷していました。
経営陣の中でも関心を持つ役員は少数派であり、生成AI活用に対するスタンスは、部門によってもかなり温度差があるような状況でした。
冒頭で記載した通り、専門知識やITリテラシーを問わず、誰でも簡単に使えるのが生成AIの利点です。生成AIを全役員が積極的に利用するようになれば、前述の無関心層も完全に無視はできなくなりますし、興味関心層は感化されて実際に利用を開始するかもしれません。また、今までは上司に理解されずに肩身の狭い想いをしていたかもしれない積極取組層も、今まで以上に積極的に活用推進に取り組み、周囲の社員に良い影響を及ぼしてくれるはずです。
では、どのようにすれば、役員に生成AIを活用してもらえるのか。そこで考えたのが「役員向けハンズオンレクチャー」です。


役員向けハンズオンレクチャーとは

筆者の経験からすると、一般的に 役員向けのレクチャーといえば、短期間での座学が多いと思います。
しかし、実際に使ってみて、できること、できないことを理解しないことには自部門内での活用推進はできないでしょう。また、部門のトップ(もしくは会社のトップ)自らが実際に生成AIを活用している姿を見れば、部下たちもきっと生成AIの活用に取り組んでくれるはず。
ということで、社長を含む全12名の役員に対し、計3回のレクチャーを通じて、生成AIの仕組みや得意・不得意領域について理解を深めてもらい、自部門や自身の業務効率化・高度化を図ってもらうというレクチャーを実施しました。
では、具体的な進め方、カリキュラムをご紹介します。


模擬課題

役員は担当部門も経歴も様々です。運用担当もいれば、営業担当もいるし、法務担当もいます。また、キャリアも様々ですので、当然関心のあるテーマも多種多様。そんな役員全員が、モチベーションを維持しながらレクチャーに取り組むために、複数の模擬課題を用意しました。模擬課題を生成AIで解決することで、得意・不得意を理解してもらう試みです。 

模擬課題としては以下の3つを用意しました。
課題Aは、BtoC領域の役員が興味を持って取り組めるように意識をした内容としました。顧客と担当者とのやりとりから、成功事例を分析し、失敗事例に対する改善策を考える、という課題です。
課題Bは、運用領域における模擬課題として設定しました。委託先の運用報告レポートを複数年にわたって分析するという内容です。使用するレポートが英文なので、翻訳の精度も学べます。
課題Cは、全役員共通のテーマとして、部下のキャリア形成のサポートへの生成AI活用を課題としました。

模擬課題一覧

各役員からは、
・数十ページの英文レポートを正確に読み込めるのはびっくりだ。
・表形式で回答を生成してくれるのは見やすくて便利。
・単純な計算も苦手なのは意外。
・回答が毎回異なるのは使いにくい。
など、率直な感想が寄せられました。

ハンズオンレクチャーの様子


部門課題への生成AIの適用ディスカッション

生成AIの得意不得意を実感した後、各所管部門への適用についてディスカッションを行いました。全役員非常に積極的で、全ディスカッションを通じ、60以上のユースケースが創出されました。
ユースケースとしては、手元のデータを利用した分析、要約やチェックリストと手元データの突合といったものが中心でしたが、中には、生成AIを活用して業務の類型化を図りたい、や、生成AIエージェントを作る、といった非常に面白いアイデアもいくつか生まれました。


生成AI役員向けハンズオンレクチャーを実施した結果

レクチャー終了後も生成AIを活用し続ける役員や、部下と対話する役員が増え、部門および会社全体の生成AI利用率は向上しました。また、生成AI活用ユースケースを探すことで、自部門内の課題に改めて目を向けることもできたと思います。実際にこのレクチャーがきっかけとなり、部内の業務を生成AIを活用して変えたい、という声が多く聞こえるようになりました。

ぜひこのようなレクチャーを通じて、自部門や会社全体の業務を見直すきっかけづくりをしてみてはいかがでしょうか。
 
詳しく話が聞きたい、自社の生成AI活用の取り組みも話したいなど、法人の読者の方からのコンタクト(クリエイターへのお問い合わせ)をお待ちしております。※営業目的でのコンタクトは固くお断りします。


【筆者紹介】
山田智久:大手証券会社入社後、ネット銀行立ち上げを経て、大手小売業にて複数の大型DXプロジェクトに従事。2022年よりニッセイアセットマネジメントにて資産運用に関するDX業務を担当。CFP🄬認定者。UX検定™保有。


当資料で、筆者の紹介のある記事においては、掲載されている感想や評価はあくまでも筆者自身のものであり、ニッセイアセットマネジメントのものではありませんが、ニッセイアセットマネジメントと筆者との間でこれらの表示に係る情報等のやり取りを直接的又は間接的に行っているため、実質的にはニッセイアセットマネジメントの広告(「不当景品類及び不当表示防止法」におけるニッセイアセットマネジメントの表示)等に該当する場合がございますので、ご留意願います。

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