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一生涯にわたる資産形成のためのヒント~⑥パートナー、ダブルインカム編~


共働きでお子さんがいらっしゃらないご夫婦のライフスタイル

今回考えてみたいのは、共働きをされていて、お子さんがいらっしゃらないご夫婦の資産形成です。

近年は結婚されるカップルがどちらも正社員で働いているケースが増えています。また、結婚を機にどちらかが、退職する割合は減少しており、結婚後も共働きを続ける夫婦が増えています。

お子さんについては望まれない夫婦もありますし、望んでも恵まれなかったというご夫婦もあるでしょう。どちらの場合でも、仲の良い二人が、縁があって結婚をされたわけですから、二人が長い人生を幸せに歩んでいけるようなマネープランを考えたいところです。

まずは、老後への備えの状況を考えてみましょう。

ダブルの退職金、ダブルの厚生年金で老後は安心か

前回ご紹介した、共働き子育て夫婦のケースと同様に、正社員として働く共働き夫婦には老後に向けた一定の安心づくりが進行中です。

ひとつは「厚生年金が二人分」もらえるということです。ひとりあたりの年金額(厚生年金+基礎年金)がモデルでは月16.2万円です。厚生年金の金額は加入年数とその間の保険料の納付実績によって決まってきますが、お子さんのいらっしゃらない共働き正社員夫婦だと、夫婦ともに厚生年金額が高い水準であることも多く、合計で月30万円以上ということも珍しくありません。

全国の平均的な年金生活夫婦の家計支出は月26.9万円であり、ここには教養・娯楽費や交際費も含まれています。これを公的年金だけで上回るほどの安定収入が老後に期待できます。(総務省統計局 「家計調査年報(家計収支編)2022年」)

ただし、どちらかが先立ってしまったあとは、1人分の厚生年金と基礎年金になるので(残された配偶者が厚生年金をしっかりもらえる場合、遺族厚生年金は少なくなってしまいます)、収入が半減するイメージを持っておく必要があります。ちなみに全国の平均的な単身年金生活者の家計支出は月15.5万円なので赤字にはならないが余裕はあまりないというところでしょうか。

老後に向けた2つめの準備は「退職金が二人分」もらえるということです。多くの企業では退職金制度を有しており定年退職時にまとまった金額の受け取りが生じます。

企業ごとに水準は様々ですから、自社のモデル額を確認していただきたいところですが、中堅~大企業では定年退職者が1000万円を超えるまとまった金額となることもよくあります。あまり多くないケースであっても、夫婦で合計1000万円の収入を定年退職時にもらえれば、老後の不安は大きく軽減されます。

また、教育ローンが老後の重荷にならないこともマネープランの観点では大きな意味を持ちます。子育て夫婦はしばしば、教育ローンを残したまま定年退職を迎えており、退職金でこれを完済しています。老後のための資産形成であったはずの退職金が受け取りすぐに数割(あるいはそれ以上)減ってしまうことは老後の選択肢を大きく狭めてしまう恐れがありますが、そうした心配はありません。

最初に述べた公的年金受け取り額の差、二人分の退職金受取額の差を合計すれば、それだけで2000万円あるいはそれ以上ということもあり、老後の不安には一定のメドがたっているといえます。

しかし、老後に余裕があるか、というと必ずしもそうではありません。

余裕のある現役時代と同じ生活 老後も続けたいなら積極的な資産形成を

お子さんのいらっしゃらない共働き夫婦の場合、経済的には少し余裕のある生活をしていることがあります。

仮に子ども1人分の子育て費用を2000万円として、2人の子育てをしたご夫婦が4000万円を25年で支出したとすれば、平均して年間160万円の支出が生じることになります。その負担がない分を自分たちの生活を楽しむために使っていた場合、他の世帯より多い年金水準であっても、「老後の年金額がこれではちょっと苦しい」ということになってしまいます。

老後の生活費として、夫婦合計の年金額にさらに上乗せでプラス5万円くらい欲しい、と考えたのであれば、人生100年時代を勘案すれば約2000万円が必要となります(年60万円×35年=2100万円)。

「夫婦でリタイア後の旅行は海外にも行きたい」とか「趣味の陶芸などちょっと予算をかけてでも楽しみたい」のようにイメージがあれば、一般的な夫婦の老後のイメージより上積みをした老後のための資金計画を考えてみましょう。

そのために必要なのは、リタイアまでに家計を見直し、ローンの返済を積極的に進めるような取り組みです。

節約と言うのは必要性が見えてこないとなかなか実行できないものです。子育て夫婦は「子どもの食費や学費を出さなくちゃいけないから」という理由が節約の大きな動機となっていることがあります。

お子さんのいらっしゃらない共働き夫婦は、目の前のやりくりが赤字にならないからと、ほとんど貯金をしていないこともあります。こういう場合は、やはり家計の見直しが必要です。「二人で一生楽しく暮らす」を合い言葉に、使いすぎている出費は少しダイエットしてみましょう。

また、早期に住宅購入資金を確保し、また住宅ローンの返済について早期完済を目指していくことも有効です。もうちょっと返済額を増やしても実はやりくりできる、というご夫婦は返済額をアップさせることで、退職金を全額老後の楽しみのために残せるかもしれません。また、返済額のアップが結果として生活費を抑えることにもなったりします。

そして、老後に向けた備えもスタートしてみたいところです。

ダブルiDeCo、ダブルNISAのイメージで楽しい老後への備えを

ダブルインカムのご夫婦が、本気で老後のための安心づくりに取り組まれるのであれば、ダブルiDeCo、ダブルNISAの口座開設を検討してみてください。

まず、正社員として共働きされているのであれば、iDeCo口座をそれぞれが開設してみましょう。現役時代の所得税や住民税の負担は重いものですが、iDeCoはこれを軽減してくれます(掛金の全額が所得控除になり税負担が軽減される)。

働き方によって(会社の企業年金の有無や水準によって)、毎月の積立額の上限が異なりますので、不明な点はiDeCoの取り扱い金融機関(運営管理機関)というに確認してみてください。会社の企業年金の有無や水準については社内で確認してみましょう。

もしも夫婦がそれぞれ月1.2万円の積み立てをした場合、年28.8万円が積み上がり、税率が20%相当とすれば年5.76万円の節税が、そのまま老後の資産増に寄与したことになります。

これを40歳から65歳まで続けることができれば、元本720万円、運用収益が年4%とすれば1234万円を積み上げて老後を迎えることになります。

同様に、2人ともNISA口座も開設してみましょう。NISA口座は運用収益への課税が非課税ですが、総枠が1800万円(購入時の価格で判断)もあるので、リタイアまでに枠を使い切るくらいの拠出ができれば、老後のお金の心配は大幅に軽減されるのではないでしょうか。

ちなみに月5万円を25年(40~65歳まで)積み上げた元本が1500万円ですから、ボーナスも併用しながら積み立てできれば、決して不可能な数字ではないでしょう。これに年4%の収益が加われば2570万円です。

「ダブルiDeCo+NISA」でも老後の備えについてかなり安心感が出てくる可能性が高く、、「ダブルiDeCo+ダブルNISA」が実行できれば、老後の生活水準もほとんど落とさずにふたりで暮らしていくことができるでしょう。

おひとりさまの不安、介護の不安もにらんだ資産形成を

ところで、経済的な余裕を老後に向けて行うことは、ふたりの老後の介護や闘病時の余裕づくりにもつながります。

通院時や介護について、子に頼むというのはよくあるケースです。皆さんも、親の介護をサポートすることもあるでしょう。しかし、自分たちは子に頼めないことを考えれば、介護サービスなどにお金を払って頼む必要が出てきます。

夫婦が助け合っているうちはまだいいのですが、どちらかが先だったあとの心配も考えれば、やはりお金が頼りとなることもあります。終身介護つきの老人ホームに入居できるようなお金の余裕があればかなり安心できますが、そう安いものではありません。

本連載でも何度か指摘していますが、物価上昇などの気配も気になるところです。豊かな生活を積極的に楽しみたいと考えると、物価上昇の影響も強く出てきます。

考えれば考えるほど「共働き夫婦だから余裕がある」と言ってはいられません。しかし、自由な時間は老後のほうがたっぷりあります。現役時代にしっかり資産形成をして、楽しい老後をふたりで味わい尽くしたいものですね。

【筆者紹介】
山崎 俊輔:フィナンシャル・ウィズダム代表 ファイナンシャルプランナー
1972年生まれ。中央大学法律学部法律学科卒業。企業年金研究所、FP総研を経て独立。企業年金連合会調査役として確定拠出年金の調査、制度改善要望等を担当。老後の年金や退職金制度も考慮したトータルな資産運用プランを提案。1級DCプランナー、消費生活アドバイザー。

・当資料で、筆者の紹介のある記事においては、掲載されている感想や評価はあくまでも筆者自身のものであり、ニッセイアセットマネジメントのものではありませんが、ニッセイアセットマネジメントと筆者との間でこれらの表示に係る情報等のやり取りを直接的又は間接的に行っているため、実質的にはニッセイアセットマネジメントの広告(「不当景品類及び不当表示防止法」におけるニッセイアセットマネジメントの表示)等に該当する場合がございますので、ご留意願います。

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